第9話 専属軍人の誕生
信秀の病状は徐々に快方に向かっていた。一真とAIが提案した治療法が功を奏し、栄養価の高い食事や清潔な環境によって信秀は体力を取り戻しつつあった。彼が少しずつ床を離れ、城内を歩けるようになったことで、織田家中にも安堵の空気が広がりつつあった。
ある日、信長は快復した信秀に呼ばれた。信秀は座敷で穏やかな表情を浮かべながら、信長を迎えた。
「信長よ、お前の助けがなければ、私はこうして話すこともできなかっただろう。」
信長は頭を下げた。
「父上が元気を取り戻してくださり、これほど心強いことはありません。」
信秀は信長を見つめながら言葉を続けた。
「だが、この乱世は厳しい。病に倒れて気づいたが、我が身一つでは尾張を守るのは難しい。お前がこれからは、この国の柱となれ。」
その言葉に、信長は静かに答えた。
「父上、俺が尾張を守ります。そして、この乱世を終わらせるために力を尽くします。」
信長の新たな課題
信秀の病状が安定したことで、信長は改めて尾張全体の状況に目を向けた。市場や農地改革が進む中で、信長の心に一つの不安があった。それは、尾張軍の弱さだった。
信長は一真を呼び出し、城の訓練場へと向かった。そこでは農兵たちが槍や弓の訓練を行っていたが、その動きにはどこか不安定さが目立っていた。
「一真、見てくれ。これが俺の兵だ。」
信長は農兵たちを指差しながら語った。
「尾張の兵は数こそ揃っているが、質が伴っていない。これでは美濃や駿河の兵には到底及ばない。」
一真はその言葉に頷きながら、AIを起動して分析を始めた。画面には兵士の構成や戦術についての情報が表示され、AIが冷静な声で解説を始めた。
「農兵主体の軍は戦闘能力が低く、特に長期戦には不向きです。専属の軍人を育成することで、戦力を大幅に向上させることが可能です。」
「専属の軍人……どうやって作る?」
信長の問いに、一真は答えた。
「家を継がない三男や四男を中心に募るのが良いと思います。彼らは家族のために戦う必要がなく、戦闘に専念できます。また、志を持つ下級武士や農民も対象にすることで、層を厚くすることができます。」
信長はその提案に目を輝かせた。
「家を継がぬ者たちを募り、戦場に立つ力を教え込むか……それならば、忠誠心も高めやすいだろう。」
三男四男の徴募
信長はさっそく家臣たちを城に集め、新たな軍隊を編成する計画を発表した。
「織田家を守るため、家を継がぬ者たちを募る。三男、四男、そして志を持つ者たちを集め、専属の軍人として育て上げる。」
最初は静まり返っていた広間だったが、一人の家臣が口を開いた。
「お館様、私には三男がおります。志を持っており、訓練にも耐えられるはずです。ぜひ、この計画に参加させてください。」
その言葉を皮切りに、他の家臣たちも次々と名乗りを上げ始めた。
「私の四男をお預けします。」
「我が家には三男と次男がいますが、三男を推薦します。」
こうして集まった若者たちは、十代から二十代前半までの者たちが中心となり、織田家の新たな戦力の礎となることを誓った。
専属軍人の訓練
若者たちは城内の訓練場に集められた。信長は彼らの前に立ち、力強い声で宣言した。
「お前たちは今日から尾張のために戦う軍人だ。家や土地に縛られることなく、この織田家の力を示せ!」
訓練は厳しく、過酷なものだった。
• **槍衾(やりぶすま)**の隊列を組む訓練。
• 早朝から行われる山道の駆け上がりや持久力の鍛錬。
• 弓や槍の基礎動作を何百回と繰り返す日々。
一真はAIを活用しながら、効率的な訓練方法を提案した。
「訓練を段階的に進め、まずは体力を鍛え、その後に隊列や戦術の練習を強化してください。」
信長はAIの提案に従い、訓練を進めた結果、若者たちは驚くべき速度で成長を遂げていった。
信長の視察
数ヶ月後、信長は訓練中の若者たちを視察した。槍を構え、見事に隊列を組む彼らの姿は、従来の農兵とは全く違っていた。
「これだ……これが俺の求めていた軍だ。」
信長は満足げに頷き、一真に言った。
「専属軍人がこれほどの力を持てば、尾張を守る盾となる。だが、まだ足りない。さらに強い武器が必要だ。」
一真はAIを操作し、次なる提案を促した。AIは冷静に答える。
「新たな武器として、鉄砲の導入を考えるべきです。鉄砲は訓練された兵士が扱えば、戦局を一変させる力を持っています。」
信長の目が鋭く光った。
「鉄砲……それが次の鍵か。」
未来への展望
専属軍人の育成は、織田軍を次の段階へと押し上げるものだった。しかし、信長の目はさらに先を見据えていた。鉄砲という新たな力を手にすれば、尾張は他国を圧倒する存在になれると確信していた。
「これが始まりだ。次は新しい武器を手に入れ、この軍を完成させる。」
信長は遠くを見つめながら、そう呟いた。
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