さようなら

あれからとんとん拍子で文化祭の出し物は決まっていった

私がいなかった少しの間でかなり準備が終わっていたらしい

まず文化祭の出し物は美術展

校長先生と話をつけて、学校中に展示できるそうだ

私やクラスメイトを説得するためにそこまでするとは思っていなくて正直驚いた

その熱量が伝わったのかクラスメイトも美術展にしようとしてくれている

凄いな、昭良は

私はそんなことはできない

私の知っている人でもこんなことができるのは、あっくんだけだ

なんだか懐かしいな

あっくんは変人だった

変人は変人だったけどカリスマ性があった

だから周りにはいつも人がいた

どうしてこんなことを思い出したんだろう

私の中で何かが変わった気がした


「と言う訳で皆は好きな何かの絵を一つ描いて来てくれ

文化祭はまだ時間があるからゆっくりで構わねぇけどな

じゃあ今日は解散!」

昭良の声でクラスメイトが帰宅していく

私も帰ろうとすると昭良が私の肩を掴んで止めてくる

「茜と有愛は俺と一緒に来いよ」

「今日行くの?」

「おう、有愛

じゃあ準備してくれ」

「えっと、昭良…私の意思は?」

「ないに決まってんだろ」

「…はいはい!」

私は鞄に荷物を詰める

どこに連れられて行くんでしょうかね?


あの日から二日が経った

あれから私の生活は変わってしまった

お父様…いや、お父さんは海外に行ってしまった

今は話すのが恥ずかしいから電話とかできていないけど、心の準備が出来たらゆっくり話そうと思う

学校生活にも変化があった

まず大きく変わったのは篠原さんだ

学校には来ているのだが誰とも話をしなくなった

友達が心配そうに声をかけても

「転んだだけだから」

の一点張り

それに仲が良かった成実とも全く話をしなくなってしまった

これから二人はどうなるのだろう

それは本人たちにも分からないのかもしれない

次に変わったのは昭良

前までは人の前で立つときは裏役に徹していた

それが今では私よりも積極的に前に立っている

クラスメイトもそれを当たり前のように受け入れている

私としては嬉しい限りだ


そんな昭良は私と有愛をどこかに連れ出そうとしている

「有愛、どこ行くの?」

「さぁ?」

どうやら有愛も知らないらしい

昭良はウキウキだからか話しかけても無視するし、もう不安なんだけど

いつもの駅まで話をすることもなかった

もう前みたいに元気いっぱいに話すことは出来なくなった

出来なくなってしまった

どうやって昭良と話していたっけ?

「今日はこっちの電車だ」

「わかった」

いつも帰りに乗る電車とは違う電車に乗る

ゲームセンターとも違う

どこに向かうんだろう

外の景色をボーっと眺める

「…ぁ」

段々と見覚えのある場所になっていく

一面に広がる黄色い景色

間違いない、ここは…

「綺麗だろ、この向日葵畑」

昔、あっくんと一緒に来た向日葵畑だった


懐かしい

それが一番最初に持った感想

こんな所、来ようと思わないと来ないから今まで見ることもなかった

次に思ったのは何でここを選んだか

十中八九お父さんが昭良にアドバイスしたんだろうけど、どうしてここなんだろう

あっくんとスケッチした場所は他にもいっぱいあるのに

昭良はスケッチブックをカバンから取り出すと私に渡してくる

「じゃあ上手く描いてくれよ」

「…え?私が描くの?」

「おん、俺も後で描くけどよ

有愛はどうする?ここで描くか?」

「私は他のところで描くわよ

なんで茜には強制させるのかは分からないけど」

「それは…まぁ、秘密だ

とにかく!茜は好きな景色描いてくれればいいから」

「あーうん、わかった」

私はスケッチを片手にどこを描こうか悩む

向日葵畑だし向日葵を描くのは確定だとして…

太陽を入れようかな

それともあっちの山を入れるか

ふと話をしている昭良と有愛が目に入る

和気あいあいしており、とても微笑ましいものだった

この二人をうまくいかせないかな

でも場所が悪い…

太陽とも山も微妙に入らない

だけど場所を移るように言うと、この自然な感じが出せないんだよね

どうしたものかな

『芸術って言うのはそのままでなくていいんだ』

ふと、あっくんの言葉を思い出す

『素晴らしい景色にも何かしら足りないものはある

それをうまく繋ぎ合わせるのも芸術だよ』

それを皮切りに色々なことが思い出される

芸術の話、日常の話

一緒に笑い合って一緒に怒って一緒に泣いた

その日々を思い出してしまう

あーぁ、そう言えば

秋徒は人のこと恨むような性格じゃないな…

頬に一筋の涙が流れる

それを隠すようにスケッチを始める

まるで隣にあっくんがいるみたいで幸せなスケッチだった


涙を全て流し終わると同時に目を擦った後に二人に声をかける

「終わったよ

ずっと楽しそうに話してたね」

「おう、やっぱ趣味が合うんだよな」

「そうね…悔しいけど」

「なんだとぉ」

「はいはい、そこいちゃいちゃしない」

「「誰がいちゃいちゃしてるんだ!」」

「あんた達だよ」

早く付き合わないかなコイツら

ため息をついた後に自然と笑顔になる

「早く帰ろ!」

「おう!」

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