話をしよう
作者から
今回の話は茜目線になっています
数カ月ぶりなのでどんな感じか忘れてしまっています
違和感が酷かったらスミマセン!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今日はお父様が海外に行かれる日
私はお見送りをするために学校を休むことにした
寂しい気持ちはある
でも私から離れてほしいという気持ちの方が大きい
また私が傷つけてしまうかもしれないから
でも離れたくないのも本当だ
だから今日ぐらいは、ゆっくり二人きりで過ごしたい
朝食を作っているとお父様が二階から降りてくる
寝起きなのか寝癖が酷い
私は出来上がったものを二人分のお皿に乗せる
それをリビングの机まで運ぶ
お父様は眠そうに目を擦ると箸を二膳、コップを二つそろえてくれる
二人が席に着くと私がお父様のコップにお茶を注ぐ
「「いただきます」」
そのままご飯を食べ始める
いつもならお父様が何か話してくださるのだが、今日は違った
心なしか顔色が悪く思える
箸の進み具合も悪い
もしかすると体調が悪いのかもしれない
心配になって声をかける
「お父様、大丈夫ですか?」
お父様は少し慌てて答える
「あ、あぁ大丈夫だよ」
あまり大丈夫そうには見えない
更に心配になるけど本人が大丈夫というなら言及はしない
…だけど心配だ
そんな気持ちが伝わってしまったのか、お父様が申し訳なさそうにする
「すまないね
少し緊張してしまって…」
「緊張…ですか?
飛行機に乗るのは初めてではないでしょう?」
「そっちではないんだ」
「…では?」
「茜君を足止めすること」
私は急いで学校に向かおうとする
お父様が昭良の味方だった
そんな気はしていた
お父様は私に背負ってほしくない、私は悪くないと本気で思っていらっしゃる
それならば昭良を頼る可能性もあった
私の味方でいてほしいと思っていたけれど
私は玄関の扉に手をかける
「茜!」
体が固まる
お父様が私を呼び捨てにした?
いつも、君付けで呼んでいたのに…
私が呆気にとられていると、お父様は深呼吸をして言葉を続ける
「話をしよう」
無視して学校に行くこともできた
けれど私は、リビングに足を進めていた
「……」
「……」
長い、とても長い沈黙が流れる
初めに口を開いたのはお父様だった
「僕はね、秋徒と同じように茜と接してきた…つもりだった
だけど違ったんだ
心のどこかで茜は他の家の子だと思ってしまっていた
それが無意識に敬語や君付けに出てしまっていた
本当にすまないと思っている」
そう言うとお父様はゆっくりと頭を下げる
私は慌ててしまう
「そんなこと言わないでください!
私はお父様に感謝しているんです!」
「でも気を使わせてしまっている」
「それは…」
「いつも元気に振る舞おうとしてくれる
笑顔を絶やさずにいてくれる
…でも本当は不安定で脆い心を持っている
それを隠して、また辛い思いをする
これでも茜のことはよく見ていたつもりだ
だから、すまない」
「……」
お父様は通知のなったスマホを見て、笑う
「僕の役割は終わったようだ
茜、学校に行きなさい」
私は黙って玄関に向かって扉に手をかける
もうこれから長らく会わないだろう
何か言わないと
そう思いながら後ろを振り向く
微笑を浮かべるお父様を一目見て、言いたいことは決まった
あとは少しの勇気だけ
「…行ってきます、お父さん」
「…あぁ気を付けて」
学校に着くと靴箱に昭良とモブがいた
「早速で悪ぃんだが屋上行ってくれ」
「篠原さんが話したいことがあるらしいです」
「…今日は変な日だね」
私は誰に言うでもなく、一人呟く
色んな事が一気に起こりすぎだよ…
「それが人生に変わり目なんですよ」
モブがボソッと呟く
「突然のように訪れるもの
それが自分を変えるきっかけになります
僕だってそうでしたから
もしも、あの時行動できなかったら僕はここにいなかった
成実さんと気まずいままで、いつまでも傍観者
だから茜さんも後悔のない選択を
…なんて偉そうなことを言うつもりはありません
選択して後悔しても、前に進んで下さい」
モブは寂しそうに上を見る
私はそれを見て、前に進む
後ろは振り返らなかった
走る、ただ走る
屋上に向かって走る
授業中だからか学校はびっくりするほど静かだった
その間、私について考える
私って何だろう
何で生きているんだろう
何で生かされたんだろう
何で生まれたんだろう
この命は人を傷つけた
人を殺した
自分より多い人間を殺して傷つけた
なのに何でのうのうと生きているの?
そんな問いを抱えて私は重い屋上の扉を開ける
そこには成実と篠原さんがいた
おかしいところがあるとしたら、篠原さんの可愛らしい顔に物凄い打撲痕がついていること
そして成実の拳に血が滴っていること
成実は私の姿を見たら、舌打ちをして屋上から出て行こうとする
「待って、ナーちゃん…」
「…何?」
「私の、カバンの中に、日記があるの…
それを、見て…」
成実は何も言わずにバタンッと扉を勢い良く閉めて出て行く
私はただそれを見ていた
「何が何だか、分からないですよね
すぐにアナタも同じ気持ちになるので、大丈夫です」
「…いやいや、手当てしないと!
喧嘩にしてもこれはやり過ぎだよ!」
私が急いで篠原さんの元に駆け寄る
その時に、耳元で囁かれる
「私が秋徒先輩を殺しました」
「…え?」
「あれは三年前の夏です
私はキャンプに行きました
その時に転んで車道に出たんです
そしたら私の目の前で銀色のワゴン車が崖に落ちました
私はバレるのを恐れて通報もせず、その場を去りました
…信じていただけました?秋徒先輩の恋人さん」
私は左手で篠原の胸ぐらを掴む
そのまま右手の拳を固めて…やめる
殴られると思った篠原さんは目を閉じたままだ
私は左手も下ろして、篠原さんの頬に優しく触れる
流石に予想外だったのか、篠原さんは目を開けて私を見る
「…どうして?
どうして私を殴らないんですか?」
「アナタが私と似ている…からかな」
「え?」
私も人を幸せにすることで自分の罪を償おうとしていた
篠原さんは人の恨みを受けることで罪を償おうとした
そこにどんな違いがあるのだろう
私って、こんな顔だったんだ
「あーあ、情けなくなっちゃった」
「あの!…私はどうすれば?
どうすれば許されますか!」
「許さないよ?」
「なら!」
「だから生きて
醜く生きて生きて、答えを探して
どうしたら自分を許せるのか」
それだけ言って私は屋上を出て行く
今、篠原さんはどんな顔をしているだろう
きっと私みたいな顔をしているんだろうな
あの頃の死にたがりの私みたいに
私は救済のために生きてと言ったのではない
それが一番絶望するから生きてと言った
…私みたいに
文化祭の出し物は美術展でいつの間にか決まっていた
でも今の私は前よりも拒絶しなかった
どうしてだろうと思った時に、悔しいけどモブの言葉を思い出した
…変わったんだ私
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