覚悟と対立

俺はその手を…全力で叩いた

「ふざけんじゃねぇ!」

「あ、昭良?」

いきなり俺がキレたからか、本気で困惑する茜

なんて馬鹿みてぇな顔しやがる

それでも俺は続ける

怒りは収まっていないからだ

「俺が秋徒の生まれ変わり?

背負わせんな?

ふざけんじゃねぇ!

茜が言ってることは馬鹿みてぇだ!

現実から逃げてるくせに背負ってます、被害者ですって顔しやがって!」

そこまで言われて、茜もカチンときたのか言い返してくる

「なんで昭良にそんな言われないといけないの⁉」

「逃げてんのは本当だろ‼」

「ッ…」

なにか心当たりがあるのか、少し臆する茜

しかし、それも本当に少しだった

すぐに言い返してくる

「昭良には分からないでしょ!

人を殺してしまった、この気持ち!」

「殺してねぇんだよ!お前は!

逃げる口実に使ってるだけだろ!」

「ッ、でも!秋徒は私のことを恨んで!」

「ねぇに決まってんだろ!」

「ッ…アンタに何が分かるの!」

「分かんねぇよ!何も分かってねぇよ!

恋人が死んだ辛さ?家族が死んだ辛さ?目の前で人が死んだ辛さ?

何一つわっかんねぇよ‼」

「じゃあなんで!」

「でもな‼これだけは分かるんだよ!

茜は悪くねぇ!秋徒も誰も恨んでねぇ!そして死んだ奴らも生きてる奴らも!

…お前の幸せを、今、幸せであって欲しいって思ってるんだ」

そこまで言って、茜の様子がおかしくなる

突然頭を抱えて座り込む

そして何かブツブツと呟き始める

その声はだんだんと大きくなっていった

「…とめない、認めない!認めない‼」

茜は立ち上がって、俺の胸ぐらを掴む

その顔は怒りで満ちていた

「私は!絶対に認めない!

この世界はゲームで、私は親友で、アンタは『player』!」

その言葉にまた怒りを覚えた俺は同じように茜の胸ぐらを掴む

あんまりにも茜が軽いせいで少し浮いてしまった

そんなのはお構いなしに叫ぶ

「違うね!今のお前はただ逃げてるだけだ!

だから俺がその目を覚ましてやる!文化祭でな‼」

「やってみなさいよ!私は絶対に阻止してやるから!」

こうして俺と茜の戦いが始まった


「…って訳だ」

「どういうことよ」

帰ってすぐに俺は有愛に状況を説明した

もちろん茜の過去は話さずに

すぐに連絡したのは、もちろん作戦会議をするためだ

どうすれば文化祭で美術展ができるか

「と言うか、それで本当に何とかなるの?」

「あぁ、なる」

「…随分と確信してるわね」

今回、茜と向き合って分かった

茜は意識しているのかは知らないが絵を描くことを避けている

それが秋徒との一番の思い出でもあったのだろう

「絵を描かせさえすれば、こっちの勝ちだ」

「問題はどうやって皆を説得するか、ね

正直、文化祭の出し物としてはかなり弱いのよ」

「これは皆を説得するんじゃなくて、茜本人を説得するのが一番速いと思う

茜ってクラスから異様に人気が高いだろ」

そう言うと電話越しにため息をつかれる

「勝負とか言っておきながら結局茜の力を使うのね…」

「俺だって気にしてるんだよ!

だけどこれ以外に何も思いつかねぇんだ」

「まぁそうよね

そもそも茜があんなに人気な理由も分かってないし

原因が分からないんじゃ、どうしようもないし、そもそも原因があるのかすら分からない

茜のカリスマとかじゃどうしようもないわ

だけど、茜の説得なんてどうするのよ

今から頭下げに行くの?」

「俺だってそんなアホじゃねぇーよ

きちんと考えがある

保健室の先生だ」

「…保健室の先生って、あの変人?」

「いつもシスター服を着ているあの人だ」

茜は保健室の先生には心酔している

その先生から一言貰えれば、考えが変わるかもしれない

「だから明日は保健室の先生の元に行く

幸いにも文化祭の出し物を決める日は、まだまだ先だ

何回でも何十回でもお願いしてやる」


「いいですよぉー」

「…あ?」

俺たちは翌日の昼休み、早速保健室に向かった

案の定そこにはシスター服を着たおばあさんがいた

俺は玉砕覚悟でお願いした

そしたら、あっさりOKを貰えてしまった

有愛もまさかこんなにあっさり行くとは思っていなかったらしく、開いた口がふさがっていなかった

「そんなに驚くなんてぇー」

「いや、茜の味方だと思ってたんで」

「私はぁ皆の味方ですよぉー

確かぁ美術展ですよねぇー

校長に頼んでぇー学校中に掲示してもらいましょうかぁー」

「本当っすか⁉」

そんなことまでしてくれるとは思わず、大きな声が出てしまう

これで文化祭の出し物として弱いという欠点は消えたようなもんだ

本当に何とかなるかもしれない

「ですがぁ…条件があります」

突然真面目な口調になる

一筋縄じゃ行かないってことか

「何でも言ってください」

「簡単なことです

「なっ…⁉」

「それじゃあ頼んだ意味がないじゃない!」

いくら何でも無茶ぶりすぎる

それが出来ないから頼みに来たというのに

「あなた方は、まだ茜さんと向き合うことができていない

…それに私では茜さんを説得できない

なぜなら茜さんが信じているのは私ではなく、神のような存在ですから

ですからこれは私からの宿題です」

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