恋愛ゲーム
桜の木の下で出会った二人は永遠に結ばれる
この学校には、そんな伝説がある
そしてヒロインと主人公はそこで出会う―
何回も、何十回も見た冒頭だ
「生前の秋徒が唯一やっていたゲームでね
芸術以外には殆ど何の興味を見せなかったんだけど、これだけは違った
一体何が好きだったのかはよくわからなかったけど
たまに帰ってきたら茜君と一緒に楽しんでいたね」
「それと何が関係あるのか?」
「…それって
「どうだったかな」
「正式名称は"桜と恋の伝説と三人の巫女”なんだけど聞いたことない?」
「あ~そんな感じだったかも」
「なんだ有愛、詳しいな」
「中学生の頃、やってたのよ
放課後の時間とかで」
「友達いなかったんだな」
「アンタ馬鹿にしてるの⁉」
「おう」
「人のこと言えないでしょ!」
「中学の頃は喧嘩ばっかしてたからな
残念だが暇なんてなかった」
「誇れることじゃないわよ、それ…
話し戻すわよ
桜と恋の伝説と三人の巫女
通称"桜伝”
あまりにも強い凶暴性を抑えられずにいた主人公
そんなある日、桜の木の下で一人の少女と出会う
不思議と安心感を覚えるような子に
それから二人のヒロインにも出会って本編が始まる」
「これが何の関係があるんだ?」
「主人公とアンタ、そっくりよ」
「…俺は別に抑えられない凶暴性とかねぇけど?」
「見た目が凶暴そうじゃない」
「酷くねぇか⁉」
確かに見た目で怖がられるけどよ…
「それにね
今、昭良が仲良くしている女の子
茜、私、成実
ちょうど三人
しかも全部、茜のお陰で関係を持ってる」
「だけど茜は俺からの告白を拒否したぜ?」
「それじゃあ、最後のヒロインは爽花さんかも
アンタと仲良くさせたかったけど、なぜか爽花さんは茜のこと避けていたから関わらせることはできなかったけど」
確かにモブから、俺が篠原と練習すると聞いた茜は嬉しそうだったと聞いた
「…いや、それでもまだ言い切れないと思う」
「そうかい?」
黙って聞いていたおっさんが真剣に話す
今までには見られなかった雰囲気だ
「僕からしたら十分だと思うよ
突然元気になった茜君
ゲームみたいな出会い
三人のヒロイン
それに…それが秋徒が茜君とよくしていたゲームだ
僕には茜君が何を考えているか分かるかもしれない」
「なんだよ、おっさん」
「秋徒が君を操作してると思ってるんじゃないかな?」
「んなことあんのかよ」
「僕には分かるよ
茜君はずっと秋徒のことを気にしていたからね
縋りたくもなるんじゃないかな」
「…俺には分かんねぇな」
「それでいいと思うよ
それが、幸せだよ」
その言葉には重みがあった
俺なんかとは比べ物にならないほどに
「本当にそうだとして、どうするの?
茜の目を覚ましてあげる?
そのままにする?」
「目は覚ましてあげたいね
茜君も辛いだろうし、秋徒も望んでない」
「それもそうだな」
「どうやって目を覚まさせるの?
本人に言ってみる?」
「それは…あんまりやりたくないかな
認めたくなくて思い込んでるわけだからね
私としては茜君が自分から秋徒の死を正面から受け止めるような、そんな方法がいいね」
「そうは言われてもよ
俺と有愛はそもそも秋徒って人を知らねぇんだ
何か、秋徒の特徴とか教えろよ」
「そうだね…
少し言ったかもしれないけど、絵を描くのが好きな子でね
よく茜君と一緒に描いていたよ」
「茜が絵を?
有愛、聞いたことあるか?」
「ないわね」
「それじゃあ、避けているのかもね
それか秋徒に合わせてくれていただけか」
「それでも茜と秋徒の大切な思い出には違いねぇんだろ
…絵か
茜に絵を描かせれる、いい方法探そうぜ」
「本当に効果あるか分からないわよ?」
「それでもやってみなきゃ始まんねぇだろ
それに俺はこれ以上いい方法が思いつかねぇ」
「…それもそうね
絵を描かせるだけなら簡単よ
文化祭でそれらしいのをやればいいの」
「「文化祭?」」
文化祭
俺たちの学校は夏休み前に行われる
各クラス、何かしらの屋台や展示、劇を行う
それが二日間
「問題があるとするなら文化祭で展示は反対が多そうなこと」
「まぁそうだよなー
せっかくの文化祭
屋台とかしたいよな」
「だけど皆、茜と仲いいから茜の一言で展示になるかもしれないわ」
「結局は茜次第か」
「僕からも、そこはかとなく言ってみるよ」
「じゃあそう言うことで今日は解散か」
「皆で力を合わせて茜を助けるわよ!」
「そうだね
僕も父として頑張るよ」
そう言うことで今日は解散となった
店を出た時には辺りはすでに暗くなっていた
思ったよりもかかったな
「あ、そうだわ」
帰り際に有愛が、おっさんに向かって言う
「茜のこと、本当の娘みたいに思ってるんだったら秋徒って人と同じように呼び捨てにしてあげなさい
距離を取っているように感じるわよ」
おっさんの表情はよく見えなかったが
「そう…だったんだね」
何か後悔をしているようだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます