第11話「試練の商談と新たな挑戦」
ギルド長・ガイルに試作品を渡してから数週間後。
ミリアは冒険者としてのランクを上げるため、再びギルドを訪れた。
ギルドの中は活気にあふれ、冒険者たちが依頼書を確認しながら談笑している。ミリアは少し緊張しながら受付へ向かった。
「すみません、クエストを受けたいのですが、初めてで……どうすれば良いでしょうか?」
受付の職員はにこやかに微笑んで答える。
「かしこまりました。まずはお名前をお願いします。」
「ミリア・サクヤです。」
ギルドカードを渡すと、職員は手際よく確認を済ませた。
「ミリア様の現在のランクはFですね。こちらのクエストはいかがでしょう?」
提示されたクエスト一覧(ランクF)
リーフレット王国の外周で薬草採取
スライムを5体討伐し、核またはドロップアイテムを提出
野良猫の捜索と保護
サクヤ商店のアルバイト手伝い
ミリアは依頼書を眺めながら少し首をかしげた。
「……サクヤ商店のアルバイト?うち、従業員は足りてるはずだけど……?」
モンスター討伐は自信がなく、薬草採取か野良猫探しで悩む。考えあぐねた末、再び受付に尋ねた。
「すみません、クエストは1つだけ選ぶんですよね?」
「はい。ただ、余裕があれば2つ同時に受ける方もいますよ。」
少し迷ったが、初めてのクエストということもあり、ミリアは1つに決めた。
「こちらの薬草採取のクエストをお願いします!」
「かしこまりました。ギルドカードをお預かりしますね。」
職員からギルドカードと受注書を受け取り、ミリアは意気揚々と街の外へ向かった。
街の外は穏やかな自然が広がっていた。緊張しつつも薬草を探して歩くミリア。
「これが……冒険者の仕事かぁ。でも、意外と楽しいかも。」
草むらをかき分け、慎重に薬草を採取していく。ときおり野生の小動物が顔を出し、思わず微笑んでしまう。
数時間後、無事に薬草を集め終えたミリアはギルドへ戻り、クエスト報告を済ませた。
「お!ミリアさん、いいところに来たな!」
受付を離れようとした瞬間、ギルド長・ガイルの声が響いた。
「ギルド長、こんにちは。」
「ちょっと話があるんだ。ギルド長室まで来てくれ。」
ミリアは少し緊張しながら、ガイルの後を追った。
「ミリア、前回もらった試作品のことだが……」
ガイルはデスクの上に数枚の書類を広げる。
「冒険者たちに使わせてみた結果、評判が上々だった。そこで正式にサクヤ商店で販売してほしいんだ!」
ミリアは驚きつつも冷静に答える。
「すぐに販売するとなると、製造側のお店と調整が必要です。それに、試作品ですから、使い心地や不具合の調査も必要かと……」
「それも考えている。冒険者たちにフィードバックを集めさせ、報告書としてまとめる。それをもとに量産の準備を進めてくれ。」
「わかりました。報告書を確認した後、製造を依頼し販売を開始します。」
「よし、話はまとまったな。何かあれば、こちらからも連絡する。」
「ありがとうございます。これが私の初めての正式な商談ですね……!」
ミリアは心の中で小さくガッツポーズをした。
ギルドからの帰り道、ミリアは商人としての自信が少しずつ芽生えているのを感じていた。
しかし、その翌日。
ガレンから伝えられたのは、大規模な商談のチャンスだった。
「ミリア、王都の大商人から取引の申し出が来ている。お前が交渉役として行ってみないか?」
「……私が?」
「そうだ。お前の成長を見て、ギルドも推薦状を書いてくれると言っている。」
ミリアは一瞬、不安で胸がいっぱいになったが、すぐに拳を握りしめた。
「やってみます!私、もっと強くなりたいんです。」
商談の場は予想以上に厳しく、相手の商人は冷静かつ鋭い質問を投げかけてきた。
「サクヤ商店の製品にどんな強みがあるのか?」
「市場競争でどのように差別化するつもりか?」
ミリアは一つ一つの質問に対して、ギルドで得た経験や冒険者たちの声を基に答えていった。
商談の最中、ふと気づいた。
(ギルドの推薦が、これほど信頼を生むものなんだ……!)
その瞬間、彼女はギルドとの繋がりが自分の大きな支えであることを実感する。
数時間後、商談は無事に成功。
「見事な交渉だったな、ミリアさん。」
「ありがとうございます……!」
ミリアは心の中で静かに達成感を噛みしめた。商人として、一歩成長できたことを確信する。
ギルドへ戻る途中、青空を見上げながらつぶやいた。
「もっと強く、もっと遠くへ。これが私の新たな挑戦だ。」
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