第10話「ギルドの世界を知る」
翌日、私はガレンさんに相談することにした。
「ガレンさん、少しお時間いいですか?」
「どうしたんだね?」
「実は、考えた商品アイデアについて意見を聞きたくて……」
ミリアは準備していた資料をガレンの前に差し出した。
ミリアの提案する商品アイデア
魔道具付き保存食「エバーブレッド」
小型の魔道具を内蔵し、1か月以上柔らかさを保てる保存食(パンなど)。
ただし、生肉などの保存は不可。
万能ポーションスープ
薬草とスパイスを調合したスープで、軽い疲労回復や滋養強壮効果がある。
戦士や冒険者向けの栄養補給食として人気が出そう。
瞬冷スイーツ「フロストベリータルト」
常温でもひんやりとした食感が楽しめる魔法冷却スイーツ。
特殊な氷属性のハーブを使用し、口の中でひんやり感が広がるスイーツ。
ミリアの特製ハーブティーセット
安眠・集中力向上・美肌効果など、目的別にブレンドしたハーブティー。
サクヤ商店の看板商品として、女性や学者層に人気が出るかも?
ミリアは資料を見せながら説明した。
「この4つの商品を考えたのですが……」
ガレンは資料に目を通しながら腕を組む。
「ふむ、1は防具屋などで扱える商品で、2・3・4は料理や錬金に関係するものか……」
「似たような商品はすでにありますよね?」
「あるにはあるが、作る人によって人気が出たり、まったく売れなかったりするんだ。新しい商品を出すとなると、それなりの資金と時間が必要になるぞ?」
「やっぱり、そうですよね……」
ミリアは少し肩を落とした。ギルド長から冒険者にならないかと誘われたことを思い出す。
「それに、ギルド長から冒険者にならないかと誘われたんですが……」
「なんだって?」
ガレンが驚いた表情を見せる。
「はい、あの書類の件で……」
「なるほど……。で、ミリアはどうしたいんだ?」
ミリアは少し悩みながらも、心の中で決めていた。
「まだ考え中ですが……リーフレット王国の資金難を少しでも解決したくて。でも、私に何ができるか……」
ガレンはしばらく考え込んだあと、静かに頷いた。
「よし、信頼できる職人たちに声をかけてみる。詳細を話すのはミリアにお願いするが、それでいいか?」
「はい!お願いします!」
職人たちとの出会い
それから1週間後、ガレンから呼び出しを受けた。
「ミリア、例の商品について試作を手伝ってくれそうな職人を集めたぞ。」
「本当ですか?」
「一緒に会いに行こう。」
防具屋・ダレオンとの商談
まず最初に訪れたのは防具屋・ダレオンだった。
「いらっしゃい!お、ガレンさんじゃないか!」
「ダレオン、紹介したい人がいる。ミリア・サクヤさんだ。」
「初めまして、ミリアです。試作品を作ってもらいたくて……」
ミリアは「エバーブレッド」のアイデアを説明した。
「ふむ、保存ができる魔道具付きのブレスレット、か。腕につけるタイプか?」
「はい。ブレスレットの中央に魔道具付きの宝石を埋め込み、食材などを保存できるようにしたいんです。」
ダレオンは腕を組んで考え込む。
「……試作ならできるが、問題は宝石の加工と、腕の形の個人差だな。」
「腕の形?」
「冒険者は戦闘時にガントレットを装備することが多い。ブレスレット型だと邪魔になる可能性があるな。」
ミリアははっとした。確かに、その視点は考えていなかった。
「やっぱり、難しいですか?」
「いや、ミリアさん専用の試作品なら作れる。ただ、冒険者向けにするなら、ガントレットやベルトに埋め込む形のほうがいいかもしれないな。」
「なるほど……!」
ダレオンは頷きながら言った。
「まずは試作品を作ってみよう。ただし、大量生産には時間がかかる。試行錯誤しながら最適な形を考えるよ。」
「ありがとうございます!」
錬金術師・リリアとの商談
次に訪れたのは、錬金術師・リリアの店だった。
「いらっしゃい!ガレン、珍しい客を連れてきたね?」
「リリアさん、ミリアさんの商品開発を手伝ってほしい。」
「ほぉ、君が噂のミリアさんか!」
ミリアは少し驚いた。
「えっ、噂?」
「ガレンが珍しく気にかけてる商人ってことでね。」
ミリアは少し照れながら、「万能ポーションスープ」の資料を渡した。
「薬草とスパイスを調合したスープで、冒険者向けの栄養補給にしたいんです。」
リリアは資料をじっくり見て、口元に手を当てた。
「……なるほど。これ、ポーションとスープの中間って感じか。」
「はい、回復薬ほどの効果はないですが、滋養強壮や疲労回復に……」
リリアはニヤリと笑った。
「面白い!ガレンの頼みだし、協力しよう!」
「本当ですか?」
「ああ。ただし、スープを保存するための瓶を大量に用意してもらう必要がある。それはサクヤ商店で頼めるか?」
ミリアは考え込む。
「すぐに用意できるかはアーロンさんに聞いてみないと……でも、できる限り準備します!」
「いい返事だね。じゃあ、試作品を作ってみるよ!」
「ありがとうございます!」
ギルドへの訪問
数週間後、ミリアはギルド長・ガイルを訪ねることにした。
ギルドに入ると、冒険者たちがミリアを見てヒソヒソと話していた。
「なぁ、あの娘……可愛くね?」
「確かに。ちょっと話しかけてみるか。」
ミリアは無視しようとしたが、二人の冒険者が近づいてきた。
「なぁ、お嬢ちゃん。一杯どう?」
「お酒でも飲みながら、楽しい話しようぜ?」
ミリアは後ずさった。
「すみません、私は……」
冒険者たちはしつこく絡んできたが、そこにギルドの上官・イルマが現れた。
「お前たち、その辺にしとけ。」
「なんだよ、イルマ……」
さらに、ギルド長・ガイルが姿を現す。
「お前たち、ミリアさんが何者か分かっているのか?」
「えっ……?」
ガイルは深くため息をついた。
「このミリアさんは、リーフレット王国の……」
ミリアは慌ててギルド長を止めた。
「ギルド長、それ以上は言わないでください!」
ガイルは微笑みながら頷く。
「分かった、ミリアさん。」
ミリアはギルド長室で、冒険者登録と試作品の協力要請を行った。
こうして、ミリアは商人としての活動と、冒険者としての新たな一歩を踏み出すのだった。
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