第8話「生誕祭の余波と新たな商談」

リーフレット王国の生誕祭が成功してから数カ月。サクヤ商店の評判は以前にも増して広まり、ミリアの名も「元第八皇女」として少しずつ知れ渡るようになっていた。しかし、彼女自身はすでに王族ではなく、サクヤ商店の一従業員として変わらぬ日々を過ごしていた。


そんなある日、ガレンがミリアを呼び止めた。

「ミリアさん、ちょっといいかしら?」

「はい、なんでしょうか?」

「実はね、亭主のアーロンさんがイベントの成功により忙しくなっているのは知ってるわよね?」

「はい、知っています。」

「そこで、亭主からのお願いなんだけど……君に代理の店長をやってほしいと言われたの。」

「えっ、代理店長ですか!」

(私なんかにそんな大役が務まるのだろうか……)

「ええ、本当は私も一応代理の店長として動いていたんだけど、最近は仕事が厳しくてね。」

「でも、本当は私より他の従業員の方が適任なのでは?」

「私もそう思ったんだけど……従業員のみんなが亭主に相談して、最終的に君に決まったのよ。」

「え? 本当ですか……? でも、私に務まるでしょうか……?」

ミリアは驚きながらも、店の状況を思い返した。イベント以来、サクヤ商店の人気は急上昇し、それに伴い仕事量も増えている。従業員の数が足りていないのかもしれない。

「ガレンさん、一つ質問してもいいですか?」

「何かしら?」

「今、亭主のアーロンさんはどこに?」

「部屋にこもっているわ……。」

「分かりました。」

ミリアはアーロンのいる部屋へ向かった。扉を開けると、そこには大勢の商談相手が詰めかけていた。

(こんなにたくさんの人が……。)


ガレンは、亭主のアーロンから「ミリアにはこの状況を見せたくない」と忠告されていたが、今となってはどうしようもない。

「ゴホン。現在お集まりの皆様、亭主のアーロン様は現在他の商談中ですので、代わりに私、ミリアが商談を担当させていただきます。」

ミリアの言葉に、部屋にいた人々の視線が一斉に彼女へと向いた。

「ガレンさん、今空いている商談用の部屋はありますか?」

「ええ、あるにはあるけど……商談となると、自分が代理で使っている部屋くらいしか……。」

「分かりました。その部屋を使わせてもらいます。あと、私は商談の経験がないので、横で付き合ってもらえますか?」

「いいわよ。」

こうして、ミリアはガレンの部屋を借りて、商談相手と一人ずつ面談を行った。様々な取引の相談が舞い込む中、ミリアは少しずつ商談の流れを理解していった。

日が暮れる頃、ようやく最後の商談を終え、ミリアは一息ついた。

「ガレンさん、一つお聞きしてもいいですか?」

「何かしら?」

「この商談の依頼の中に、ギルドの力を借りたいという依頼書があったんですが……これは本来ギルドが扱うべきものではないでしょうか?」

「どれどれ……確かに、これはギルド案件ね。でも、どうしてサクヤ商店に持ち込まれたのかしら……?」

ガレンはそろそろ亭主も休憩を取りに来る頃かなと思い始めたその瞬間。

ちょうどその時、アーロンが部屋へ入ってきた。

「ガレン、悪いがお茶を持ってきてくれないか?」

「分かりました。旦那様。」

「まさか……ミリアが私の負担を考えて、ガレンと一緒に商談を進めるとはな。立派な従業員になったな。」

「それは……。」

「それで、今ガレンと何を話していたんだ?」

「アーロンさん、これです。」

ミリアは、ギルド案件と思われる商談の依頼書をアーロンに手渡した。

「確かに、これはギルド案件だな。」

「アーロンさん、この商談の依頼書について、明日休みを取ってギルドに確認しに行こうと思います。」

「頼んでもいいか? 俺は今後もいろんな場所に行かないといけないことが増えそうだから、助かるよ。」

「分かりました!」

こうして、ミリアはギルドへ向かうことを決意した。

(ギルド……今まで関わったことはなかったけれど、少し興味があるかも。)

この依頼を通して、ミリアの新たな挑戦が始まるのだった。

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