AURORAちゃんの歌詞②(Daydreamer)

 今回は、ノルウェーのシンガーソングライターAURORAの曲の中から「Daydreamer」を見ていきたい。歌詞が特に優れていると感じるからだ。

 冒頭は次のようにはじまる。


White, silicon eyes, watching storms, sitting quiet

Reading books in the heat of city lights


さて、これを訳すのが難しい。

案①

白、シリコンの眼、嵐をみる、静かに座る、本を読む、街の灯りの熱の中で

案②

白いシリコンの眼で嵐を見つめ、静かに座り、街の灯りの熱の中で本を読む。


 つまり一つ一つの名詞(句)を単独で訳すか、関連させて訳すかの違いである。どちらで訳すべきだろうか。あるいは両者の中間くらいだろうか。英語でも日本語でも、歌詞(詩)の場合は必ずしも正しい構文にしなくて良い。それが難しくも面白い部分である。


 つづいてBメロ。


I know I'm just a girl, but can I change lives?

If I am nothing, if I am trying, I think I can


私はただの女の子だってわかってる

でも誰かの人生を変えられないかな?

もし私が無なら、もし挑戦してみれば、私にはできると思う


「lf I am nothing」がしびれる!段落全体としては、一人の女の子が、何か大きなものに対峙し、それを変えようとするイメージだ。なんだか勇気を与えられる。


 サビ!


And we become night time dreamers

Street walkers and small talkers

When we should be daydreamers

And moonwalkers and dream talkers


そして私たちは夜夢見る者になる

街を歩く者に たわいもない話をする者に

本当は昼の夢想家になるべきなのに

月を歩く者に 夢を語る者になるべきなのに


「動詞+er」を多用し、言葉遊びのようでもある。脚韻が心地よい。

 意味に注目すると、二行ずつの対比になっている。私たちは普段、夜は布団の中で夢を見、起きたら街を歩き、たわいもない話をする。しかし、本当はそうあるべきではない。昼間、空想にふけり、月を歩き、夢を語るべきだ!夢や空想を礼賛する歌詞である(感動)✨


 曲の終盤になると、サビの裏で次のフレーズが響いてくる。


Nothing can die while we are here……

私たちがここにいるあいだは、何も死なせない……


 そろそろまとめに入ろう。この一曲の中に、文体の工夫、押韻、対比など多様な技法が含まれていた。内容的にもさまざまな要素があったが、「Daydreamer」(夢想家)のタイトルに示されるように、全体として読み手(聴き手)を日常から切り離して遠くに連れて行ってくれるのが良い。

 そして、、、英語には「nothing」って単語があるのがずるいな、と思う。一つのフレーズの中に矛盾を作り出すのに便利な単語だ。日本語にうまく訳せないのを悔しく思う。

 もしご興味があったら、ぜひ曲も聴いてみてほしい。

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