十話「夢現、どちらか分からず眠りに落ちて」
今は俺と勇鬼の2人でゆっくり帰路を歩いている。そう言えばと、気になって勇鬼に聞いてみる。
「なんでここにいたんだ?俺てっきり家に居るものだと思ってたんだが...」
「1人で家にいたってやる事ないでしょ?テレビとか、あんたが残してくれるタブレットって奴で暇つぶしは出来るかもしれないけど、私は外で体動かす方が好きだしね」
「なるほど...」
たしかに昔は外で遊ぶぐらいしかやること無かったし、勇鬼と俺は追いかけっことかかくれんぼなどを色んなところでしていたっけ...そういえば雨の日、勇鬼の家に遊びに行くとよく勢いよく抱きつかれて出迎えてくれたっけ...あれって、沢山遊べるやった!という意味だったのだろうか...
「そういえば、お前雨の日に遊びに行くと抱きついて迎えてくれたじゃん。あれなんだったの?」
「あえっ!?あ、あれは....あ、会えてめっちゃ嬉しかった...だけ....」
可愛いかよ。
「...可愛い」
「な、ななな!!か、かわいくない!!」
つい口に出してしまったその言葉に勇鬼は顔を真っ赤にする。
「可愛いよ、お前は」
さらに俺が微笑みながら追撃をかけると、勇鬼は俺の前に来て指を指す。
「っ...さ、さき!先戻るから!!」
「怪我すんなよ」
「わかってる!」
そう言って勇鬼は走り去っていった。
俺は小さく微笑みながら、立ち止まりその後ろ姿を最後まで見送る。
姿が消えたのを確認すると、ゆっくりと風を感じて帰路を歩く。そろそろ家に着くという頃にふと、視線を感じ、慌てて周りをキョロキョロと見渡すが誰もおらず少し怖く感じ、小走りで家に帰った。
家の中に入ると手洗い、勇鬼を探す。
おそらく...というか、やっぱり寝室で、枕に抱きついてその場でごろごろしていた。
「帰ってきたぞ」
俺がそうやって戸を開けて中へはいると、勇鬼はビクウッっと体を跳ねらせて叫び声をあげる。
「ふにゃぁぁぁぁぁ?!か、帰ってきたなら、た、ただいまっていってよ!!」
「ごめんって」
そう言って俺は、勇鬼の近くで横になる。
「...」
「どした?」
勇鬼がその場でモジモジし出したのが気になり、勇鬼の方をじっと見ていると、勇鬼がバッと立ち上がるとそのまま俺に飛びついて抱きつく。
「うぉ」
「な、なでなで...」
恥ずかしいらくしほを粗めながら上目遣いでこちらを見てくる。
可愛いの塊かな?
そう心の感想をつぶやき頭を撫でる。
「...どうだ?」
「安心する...」
そう言って、勇鬼は目を閉じる俺も釣られて目を閉じると眠気が勢いよくやってくる.....抵抗する時間もなく、勇鬼の撫で心地がいいし、笑顔がほんとに癒しになって可愛い......Zzz
「おーきーろ!!」
「うぉ」
耳元で大声を出され、慌ててその場から体を起こす。
横を見ると勇鬼がたっており、時計に指を指していた。俺は流れるように時間を確認してみると夜の7時半であった。
「ご飯冷めちゃうから早く起きてよね」
「すまん...」
「謝る暇があるなら早く手を洗ってリビング来なさい!ご飯冷めちゃうんだから!お、美味しく食べて欲しいから、早く!」
「は、はい!」
可愛いなぁと思いならも言われた通りに行動し、俺はリビングへ向かった。
今日は魚料理らしく、メインのオカズは焼きジャケ2枚に、サラダはブロッコリーとトマト。汁物は普通の味噌汁で白ご飯。
まぁ和食だった。というか昨日はあんなに食べていたのに今日がこんなに少ないと少し不安に思った。
いや、おそらく逆で、本人としては今まであんまり食べれなかったけど沢山食べれたから今日はいつも通りの量にしようとしたのだようが...こっちとしてはそれで腹が減らないか心配だ。
まぁ、心配しすぎなのもあれなので、、俺は黙々とご飯を食べ進めた。夕食を食べ終わって皿洗いもして、お互いゆっくりする時間。
俺は勇鬼の頭を撫で続けていた。
「ふにゃぁぁぁ....」
「眠いのか?」
「なでなでが...気持ちよくて...」
「そうか...ならよかった」
可愛いと小さく呟いた。
「ねぇ...つかむ...抱きついてくれない...」
「いいよ」
俺はそう返事をして、勇鬼を抱きしめお互いの顔が急接近する。お互いの息遣いが聞こえ、顔が赤くなるのが見え、お互いの心音が早くなっているのが分かる。
「...なぁ。勇鬼...俺は」
...そう言葉を紡ごうとした時、勇鬼の口で防がれた。ゆっくり、ゆっくりとお互い目を閉じてその感触をお互い味わう。ゆっくりとゆっくりと...
「まだ...言わないで...でも。これが答えになるかも..」
「うん...分かった」
そう短く会話をして、お互い気まずくなったのか暫く何も喋らなかった。
ようやく喋ったのは寝る直前で...
「つかむ...抱きしめて寝ていい...?」
「いいけど...どうしたの?」
ゆっくりと勇鬼は体を擦り寄せて、俺の背に腕を回すと思いっきり抱きしめ、俺の胸に顔を埋める。
俺はいつものように頭を撫でて、勇鬼を落ち着かせる。
「忘れないから...安心しろ」
「うん...でも怖いの...」
勇鬼の目から涙がこぼれているのが分かる。
「怖いの...忘れられたくないよ...もっと覚えててよ...私を最後に覚えてる人だから....大切な人だから...覚えててよぉ...」
「忘れねぇから...安心して寝ような」
「うん...うん...」
暫くうなづき続けていたが、泣き疲れたのかそのまま寝てしまった。俺も眠くなって、いつもより強く抱き締めて、目を瞑るのだった。
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