第8話 お使いの寄り道

 さて、さっき風月に押し出された時についでに渡された袋を確認しよう。

 一応、お使いを頼まれたし。


 袋を開けてみると3つの液体が入った瓶と3通の手紙が入っていた。

 瓶にはそれぞれ冒険者ギルド、術師ギルド、商業ギルドと書かれており、手紙には訓練場宛、道場宛、薬屋ハバレー宛と書かれている。


 この6つをそれぞれ届けろと。

立地すら把握してない現状でどうしろと。まぁなんとかなるから渡してきたんだろうけど。


 さて、まずは冒険者ギルドに行ってみるか。

兵舎を出たところに立っていた兵士に場所を聞いてみるとこの道をまっすぐ行くと広場があってそこにある、とのこと。

 非常にあいまいに感じるがまぁこの説明でわかるくらいわかりやすいということなんだろうきっと。


 とりあえず、兵士の人に言われた通り道をまっすぐ進んでみると結構大き目の広場に出た。

中央には噴水があり、噴水を囲むようにベンチが等間隔に置いてある。

 そしてベンチのさらに外側に露店というか屋台のようなものがたくさんある。

屋台の一つによってみるとどうやら食べ物を取り扱っているようだ。


「すみません、何を売っているんですか?」

『あん?これはフォーチュンラビットの皮を使った串焼きだ』

「フォーチュンラビット?」

『知らんのか?この街の周りにある草原に稀に出現する兎だ。肉はあんまり美味くないんだが皮が絶品で有名なんだ』

「へぇー。なんでフォーチュンラビットって名前なんです?」

『色々な説はあるんだが...一番有力なのはホーンラビットからの変異種だといわれている』

「変異かぁ。それって種族変化とか種族進化と何が違うんです?」


 俺が知ってる種族の変化方法はこの二つしか知らないんだが...


『じゃあどんな種類があるのかから説明するか』

「いいの?」

『ああ、せっかくだしな。それに、もしフォーチュンラビットを狩ったらうちに卸してくれない?』

「あ、それならいいよ」

『うし!じゃあ説明してくぞ?』


 ありがたいけど...それ焼きすぎじゃない?


「ありがたいけどそれ大丈夫?」

『ん?うぉぉ!?あぶなっ!』

「あー...大丈夫か?」

『うーん...まぁぎり、かな。だいぶ売値が下がっちまうが』

「ならそれくれよ。俺が話しかけちゃったのが原因だし」

『いいのか?なら...10本で50Gゴールドでどうだ?元値は10本で150Gなんだが...』


 うん?そういえば初期所持金はいくらだっけ。

確認したら910Gだった。小金持ちだな。


「おっけー。じゃあこれで」

『丁度だな。まいど!』


 50Gを手渡して串焼きを10本貰った。

一応テキスト見てみるか。


====================

焦げたフォーチュンラビットの皮の串焼き


 屋台:ボルバグの串焼きやのボルバグが制作した串焼き。

フォーチュンラビットの皮を使用しルトとパーペで味付けされている。

本来なら兎特有の味とルトとパーペのハーモニーが奏でられるが少々焦げ付いている。

====================


 美味そう。

で、説明にあったボルバグってのが目の前のおっさんで、ルトとパーペってなんだ?


「うまそうなのは分かったけどルトとパーペって何?」

『ん?お前さんそんなのも知らんのか。ルトってのはしょっぱくて白い岩で、パーペってのは刺激が強い黒い実のことだ』

「へぇ~」


 塩と胡椒ってこと?

あ~ソルトとペッパーね。安直だなぁ。


「で、何の話だっけ?」

『種族の変化、進化、変異についてだな。まだこれ以外にもあるが...まあそこらへんはそこの冒険者ギルドで説明受けてくれ』


 そういってボルバグが指差した方向には他の建物よりも一回りほど大きい建物があった。


「あれ?が冒険者ギルド?」

『そう。まあ、別に俺から聞いてもいいが』

「これも何かの縁だしさっき交換条件でフォーチュンラビット狩ったら卸す約束したし聞くよ」

『そうか!じゃあまず種類についてだな。さっきも言った変異にあんたが言った変化と進化、あとは超克ってのがあるらしい。まぁ超克についてはあんまり知らないが』

「へぇ。まぁ超克についてはギルドで聞けばいいや。それで、それぞれの違いを教えてくれない?」

『まず、変化は種族に様々な要素を追加する。例えば職業や特殊なスキルだな』

「ほうほう」

『変化の一番の特徴は根本的な種族は変わらないってことだ。たとえば緑小鬼グリーンゴブリンだった場合、種族変化すると緑小鬼という種族はそのままに剣士ソードマンの職業に就いた場合は緑小鬼グリーンゴブリン剣士ソードマンになる、みたいに』


 ここら辺はゴーン...緑小鬼グリーンゴブリン蹴術家ストライカーから何となくは分かったが。


「じゃあ進化については?」

『進化は文字通り種族としての格が一段階上がるんだ。緑小鬼グリーンゴブリンの場合は...まぁ色々あるけど有名なのは緑中鬼グリーンホブゴブリンかな』

「へぇー。グリーンは消えないんだな」

『ああ、まぁそれについては変異に触れてからだな』

「了解。進化と変化については特に質問はないかな」

『わかった。そんじゃまあ本命の変異についてだな。変異ってのは生まれる瞬間に決まる。例えばホーンラビットから生まれる個体はどんな種族になると思う?』

「普通に考えてホーンラビットじゃないの?」

『実際普通はそうなんだ。だが稀にホーンラビット以外の種族...フォーチュンラビットが生まれることがある』

「ふむふむ」


 現実でいうところのアルビノとかそういうのかな?


『そんで、変異した種族は変異した種族どうしで繁殖を行い、数を増やしていく。で、さっきの小鬼ゴブリンの話になるんだが』

「何となくわかった。基本的な種族が緑小鬼グリーンゴブリンで、変異したやつが他の色の小鬼ゴブリンってことでしょ?」

『その通り。本来ならそこまで数は増えないんだが、小鬼ゴブリン特有の繁殖力の高さによってほかの色のやつも大量にいるってわけだ』

「なるほどね...ありがとう!いい話が聞けたわ」

『気にするな!こっちもいい取引先ができたみたいだし』

「まだフォーチュンラビットを狩れるかどうかはわからないぞ?」

『ま、こっちとしても持ってきてくれたらラッキーってだけだしな』

「フォーチュンだけにか?」

『そんなつもりはなかったんだがなぁ...まぁいいか。それじゃ、フォーチュンラビットの件よろしくな』

「はいはい。狩れたら持ってくるよ」


 店主のボルバグに分かれを告げて先ほど教えてくれた冒険者ギルドに歩き始める。

種族変異...もし、それもカード化できるなら、だいぶ選択肢の幅が増えるな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る