第7話 釈放ついでのおつかい

「さて、じゃあ名前とかいろいろ聞いてもいいかな?」


 ある程度歩いたところで女性がこちらに顔を向けながら話しかけてきた。

さっきは後ろに居たからあまり顔は見えなかったけど一般的な基準できれいでかわいい部類の顔をしていた。


「いいよ。まず名前はウェイン・バーダスで職業は召喚術士サモナーのLv9」

「ひっく!?始めたばっかりだから仕方ないけども。じゃあ今度は私かな。私は風月っていうの。職業は抜刀侍のLv50だよ」

「そっちは高いな!?レベル50って普通にやばくない?」

「そっちが低いだけですぅー。これでも1年はやってるからね。さすがに始めたばっかりのルーキーに追いつかれてたら笑えないわ...」

「まぁそれもそうか。それで、その抜刀侍ってどういう職業?」

「まぁ名前の通り侍の派生職業で、抜刀術メインの侍だね。転職条件は侍の状態で〔抜刀術〕のスキルレベルを最大にした状態で師範NPCに挑んでリザルトA以上をだすことね」


 侍かぁ...この国って西洋風だからあんまりなさそうだけどそういうのもあるんだね。


「聞いた感じだと結構厳しそうだけど?」

「まぁ厳しいわね。スキルレベル最大もだけどさっき言った師範NPCがまぁ強くてね。私は10回くらいやったわね」

「えぇ?そんなに強いのかそのNPC」

「なんかリアル道場の人にお願いしてトレースさせてもらったんだって。だから的確に急所狙ってくるし駆け引きもうまいのよね」

「それその師範NPCじゃなくてトレースさせてもらった人が強いだけでは?」

「...まぁそうともいうかもしれないけども!まぁそんな細かいことは良いのよ!」


 えぇ...まぁ助けてもらった側がなんかぐちぐちいうのも違うか。


「まぁ風月さんが言うならいいけども...それで?階段を上り始めたけどこれって上に行ってるってことでいいんだよね?」

「そうねー。さっきも言った通り来る前の人の罪はなくなるっていうお告げ...っていうかアナウンスなんだけど」

「あ、公式からのやつなんだそれって」

「そ。まぁどうやらこの国のデブ豚は神様に真っ向から歯向かうみたいね」

「デブ豚ってさっき言ってた王弟?」


 ってか思いっきりデブ豚って言ったねこの人。

一応さっきの看守の前では王弟って言ってたのに。


「あんなのデブ豚でいいのよ。あいつの悪行知ってる?」

「知らない。本当に最近始めたばっかりだから」

「じゃあせっかくだし教えてあげよう!あの豚、見た目がいい女性だけ集めて自分に仕えさせてやるー!って言ってきたのよ」

「へぇー。その見た目がいい女性ってプレイヤーだけ?NPC含めて?」

「NPC含めてね。あの豚、国民からも人気ないからみーんないやそうな顔してたけどね」

「ははは...」


 なんかすでにやばそう。


「それって現在の王様は何も言わなかったの?」

「言わなかったというか言えないというか...多分王様の耳に届く前にもみ消されてるって感じ?」

「うげぇーなんか面倒な国にきちゃったって感じする」

「まぁ女性プレイヤーじゃなければそうそう絡まれることもないでしょ」

「ちなみにその時ってどうやって解決したの?」

「その時はもう一人の副大臣...現王様の甥が豚をぶん殴って止めてたわ。あの時の豚の顔ときたら...もう今でも笑えるわ!多分調べたらたくさん出てくるんじゃないかしら」

「はぇー。なんか王弟と違って甥は仕事できそうだなぁ」

「実際すごく仕事できるわよ。それに見た目がいいからファンクラブもできてるみたい」

「なんか俺的にはそっちのほうが怪しく思えてくるなぁ...」

「そう?」

「まぁ、考え方が捻くれてるだけだから気にしなくていいよ」

「ふーん、まぁいいか」


 しかし...その王弟って明らかにやばいやつなのに甥も王様も処分しないんだな。

王様はまぁ知らないとしても甥は現場に立ち会ってるんだから知ってるもんだと思ったが...なーんか怪しく感じるなぁ。


「何か考え事してるみたいだけどそろそろ兵舎だよ?」

「あれ?もうそんなに上ってた?」

「まぁ私たちの体って疲れを感じにくくなってるから気が付かなかったのかな?もう結構上ってたよ」

「それほどまでに考え事してたか王弟の話が多かったかの二択かな」

「それなら考えすぎのほうだね!さ、ついたよ!あの扉から出れば【レシズム王国】だよ!」

「うーん...久々のシャバだぁ!」

「君の場合は久々じゃなくて初めてでしょ...まぁいいや。私は王様に色々話さなきゃいけないからここまでだね」

「お、マジ?じゃあいい機会だしフレンド申請してもいい?」

「いいよー!じゃあついでにお使いたのんでもいい?」

「脈絡なさすぎない?」

「まーまー!減るもんじゃないし!この3つの荷物届けてくれれば街中も回れるし!一石二鳥!」

「まぁそれならいいけど...」


====================

フレンド申請

申請者:風月

yes/no

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 yesっと。


====================

プレイヤー:風月とフレンドになった。

メッセージ機能が解放された。

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「なんかフレンドになったらメッセージ機能ってのが解放されたけど」

「ああウェインくんは私が初めてのフレンドなんだね。それはフレンドの人とやり取りするための機能だよ。まぁフレンドがオフラインの時とかインスタンスダンジョンに貼ってる間は使えないからあんまり使ってない機能かも」

「へぇー。インスタンスダンジョンって?」

「んー。ま、そこらへんはギルドに行けば教えてもらえるから!さ、行った行った!」

「ちょ、押すなって!」


 フレンドになった風月に押されて兵舎を出る。

まぁなにはともあれこれで獄中生活ともおさらばだぜ!

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