第6話 【獄牢】からの脱出作戦

 さて、たしか牢屋から出て左に行くと階段があるんだったな。

言い方的に一本道だから迷うこともなさそう。


「用心してゴーンを召喚しとくか。〔召喚サモン〕ゴーン」

『ギャヒャ!』

「先行よろしく」

『ギャヒャ』


 ゴーンに先導してもらい、【獄牢】を進む。

まぁちゃんと一本道だから看守が居たらバレバレだけども。


 すこし歩いていると遠くに階段らしきものが見える。

あそこに階段があるってことは、その前に看守が2人いるってことだから...さすがに2対1は無理なので一回引き返して巡回しているらしい看守を狙おう。


「ゴーン、回れ右して先導よろしく」

『ギャヒャ』


 そんなわけで現在来た道を逆走中。

そして、俺が出てきた牢屋の前に人がいるように見える。

 おそらく、俺が居ないことに気が付いた看守があいつに質問しているんだろう。

うまくいけば後ろから奇襲できるのでは?


「ゴーン。あの看守に気づかれないように後ろに回り込んで攻撃」

『ギャヒャ』


 ゴーンはうなずくと身をかがめてゆっくり進んでいく。

そして看守の後ろまで行くとローキックを繰り出した。


『うぉっ!』

『ギャヒャ!』


 ローキックを喰らい尻もちをついた看守に追撃として腹にかかと落としをした。

しかし、看守は横に転がってよけた。


『貴様っ!脱獄するつもりだな!』

「当たり前だろ。ってか体力多っ!?さすが平均レベル35...絶対現状で挑む相手じゃないな」

『なにぶつぶつ言っている!さっさと掛かってこい!』

「へいへい。じゃあゴーン、常に引き気味で攻撃」

『ギャヒャ!!』

『貴様...召喚術士サモナーか!《対価は魔力。恩恵は力》!〔付与術:筋力増強〕!』

「なに?そんなスキルもあるの?」

『あまりにも無知だな!《対価は魔力。恩恵は硬さ》!〔付与術:防御増強〕』

「それずるくない!?こっちはそんなの使えないんだけど!」

『それはそっちの都合だろう!《対価は魔力。恩恵は風の刃》!〔付与術:風属性〕!』

「だからそれやめろってぇ!ゴーン!足を攻めろ!」

『遅いわ!すでに付与は終わっている![二連斬り]!』


 看守がそういうと看守が持っている剣がぶれる。

ゴーンは野生の勘かなんかでよけたが、よける前にいた場所には二つの剣の軌道が残っていた。


「なるほど。そういうアーツかぁ...めんどうな」

『ふん。貴様の魔物モンスターはまだアーツが使えないようだな!アーツの使えない緑小鬼蹴術家グリーンゴブリンストライカーじゃ相手にならんな!』

「うるせぇ!まだわかんねぇだろうが!」

『ギャヒャヒャ!』


 ゴーンが看守と牽制しあっている間に粗悪な悪魔崇拝者サタニストの杖を持って突撃する。

しかし、簡単に合わせられてカウンターを喰らいそうになる...のを杖を盾にバックステップで避けようとする。

 そこに剣を振ったあとで隙をさらしている看守にゴーンが膝蹴りをする。


 膝蹴りは入ったがあまりHPは削れていない。目算1割ってところか。さすがにレベル差がありすぎる。

 ってか通常攻撃で1割しか削れないってなんだよ。中ボスとかボスとかの防御力だろそれ。


 まぁ最初の奇襲も併せてすでに3割ほど削れた。

つまりあと7回ほど腹に膝蹴りを叩き込めば勝てるな!クソゲーかよ!?


『くっ!だが、その程度ではまだ倒れないぞ!』

「さっさと倒れてくれ!こっちはまだレベル9なんだぞ!」

『知るか!それこそ貴様がレベル上げをさぼっていただけだろう!』

「うるせぇ!こちとら初めからここだぞ!あまりなめるなよ!」

『なに?最初から?貴様、異方者か!』

「異方者って?」

『そんなことも知らぬのか。貴様みたく他の世界からきている者のことだ』

「へぇー。じゃあ俺は何も罪犯してないじゃん」

『残念ながら神からのお告げで最初から罪がかけられているものはいる』

「クソが!ってことは結局あんたを倒してここから出なきゃなのかよ!」

『そうだな。だが貴様程度では勝てんぞ?』

「どうかねぇ?ゴーン!」

『ふっ残念ながら見えているぞ!』


 ゴーンが背後から襲い掛かるのと同時にかけだす。

看守がゴーンに気を取られている間に杖で襲い掛かる。


 が、勿論見えていたのかバックステップで避けられた。

さすがに簡単にはいけないか。


『さて。貴様を倒す前に名前を聞いておこう。罪状の変更をしないといけないからな』

「俺の名前か?ウェイン・バーダス。レベル9の召喚術士サモナーだ」

『ウェイン・バーダス。貴様にはつい先ほど新たに罪状が追加された。それは...〈脱獄未遂〉だ』

「未遂だったら別によくねぇか!?」

『残念ながら【厳牢】から下の階では脱獄しようとするのも罪だ』

「本当に厳しいな!?」


 そんな会話をしながらも油断なくこちらを見ている看守。

さて、どうやって倒そうか。


『さてウェイン・バーダス。貴様には一応2つの選択肢が残されている。それは、このまま自分の牢屋に戻るかここで切り捨てられて処刑されるかだ』

「うーん...それって、牢屋に戻ったらどうなる?」

『そうだな...おそらく刑が変更されるだろう』

「どんな罪になる?」

『現在の罪ですでに死刑、もしくは強制労働50年だが...おそらく死刑しかないだろうな』

「結局死ぬじゃねぇか!」

『仕方なかろう!貴様はそれほどの罪をしたのだ!』

「うるせぇ!俺は身に覚えはねぇんだよ!」

『残念ながら貴様の罪は神からのお告げで決定されている。あきらめるんだな』

「クソが!」


 さて、これにて問答終了。だが...どうしようか。


「よし、ゴーン!やっぱりこいつ倒すぞ!」

『ギャヒャヒャ!』

『そんなことだろうと思ったわ!看守リリバリティが重罪人ウェイン・バーダスを処刑する!』

「やってみろやごらぁ!ゴーン、足を狙え!」

『ギャヒャヒャ!!』


 ゴーンは指示通りに足を狙い始めたが、レベルの差がありすぎるのか簡単に避けられ接近されてしまう。

 これで終わりかなぁ...正直レベル制のゲームでレベル差は致命的なんだよなぁ。


『これで終わりだ!』


 リリバリティと名乗る看守の剣が振り下ろされるその時、初めて運命悪意の神が振り向いた。


「やめろ看守リリバリティ!上官命令だ!」

『!?』

「あんたは...?」


 気迫のある声に止められて首筋ギリギリのところで剣が止まる。

後ろを見てみると和装に身を包んだ女性が立っていた。


『なぜ止めるのですか!?』

「彼はおそらくこの世界に来たばかりなのでしょう。運命神の神託によればこの世界に来たばかりの者が来る前に行った罪科は恩赦されるはずです」

『しかし国王は...』

「えぇ?あの王様って神様に逆らうほど度胸ありましたっけ?」

『ああいえ。それを通達しに来たのが副大臣なんですよ』

「副大臣?甥のほう?」

『王弟様のほうです』

「...チッ(あの豚め)」

『え?』

「ああいえ気にしないでください。まぁそんなわけで、彼は釈放させてもらってもよろしいですか?」

『ええ...まぁ、ハイ。運命神様が望むことなら』

「ありがとうございます。そこの君もそれでいいよね?」

「あ、はい。それでおねがいします」

「じゃあついてきて」


 そういうと和装の女性は踵を返して長い廊下を歩いて行った。

なにが起きたのかいまいちわからないが、まぁなんとか脱出できそうなら脱出してしまおう。

 一応ゴーンを後ろにつかせて女性のあとを追った。

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