閑話 素晴らしき世界

「おぉぉぉぉ~!これが!ランダム・ダンジョンズの世界!よし、早速ギルドに行こう!」


 ここはとあるゲームの世界。

その世界に最初に降り立った者の記録。


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「ここが冒険者ギルド!いかにもそれっぽい!早速いくぞぉぉ!」


 そこは【レシズム王国:ウィントスの街】。

レシズム王国の中でも国境に近い辺境の街である。

 街の付近には森林に山岳、平原があり、資源には困らない豊かな土地であった。


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「職業?何があるの?」

『――――とかはどうでしょうか?』

「おお!おもしろそう!じゃあそれにします!」


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「楽しい!受付の人の言う通りこの職業にしてよかった!さぁ~て、今日の狩りも終わったし、か~えろっと!」


 変化おわりは突然...やってくる。

それの始まりは人の意志ではなく、神の意志でもない...それは、魔物の意志。


『GRRRRRWOOOOOO!!!』

「きゃっ!え!?なに!?」


 終焉それは突然目覚めた。

地獄それは...突然始まった。


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!WARNING!WARNING!

暴走スタンピードが発生しました!

場所:【レシズム王国:ウィントスの街】周辺

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「え!?暴走スタンピードって!?わっヘルプ出てきた...なになに?魔物モンスターの大量発生!?それに...場所が...い、急いで戻らなきゃ!」


 その者は走り出した。

自らが降り立った街を護るために。


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「はぁっ...はぁっ...お願い...間に合って!」


 その者は走った。

スキルによって強化された脚力に任せて走る。


「っ!見えた!」


 その者は間に合った...間に合ってしまった。


「―――さん、――――さん、みんな...どうか無事でっ!?」


 街の門に辿りついたとき、眼に映ったのは...いたるところで上がる悲鳴。

道端に転がる死体。


「そん、な...いや、まだっ!まだ生きてる人がいるかもっ!」


 その者はその凄惨な場を見ても折れなかった。

その者はおそらく一番安全な場所であるギルドへと向かった。


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 ギルドでは、複数の人たちが

魔物モンスター相手に大立ち回りをしていた。

 ある者は大剣を、ある者は二振りの剣を、ある者は杖を、ある者は大鎌を振るった。


 武器が振るわれるたびに彼らを囲む魔物モンスターが倒されていった。

しかし、包囲網が崩れることはなかった。なぜなら彼らを囲む魔物モンスターは数百、数千体いたからだ。


 それでも彼らは自らの獲物を振るう。

状況は絶望的、希望はかけらも残っていない。

なのになぜ戦うのか。それは...少しでも生存者を逃がすため。


 冒険者ギルドにはもちろん、暴走スタンピードが発生した時のマニュアルはある。

 彼ら高ランクの冒険者が殿を務め、非戦闘員から〔転移〕の魔法陣に乗って脱出する手はずだ。

 だからこそ彼らはここで戦っている。

しかし魔物は...彼らを逃がす気は毛頭なかった。


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「見えた!ギルド!...けどっ!魔物モンスターの数が多すぎるっ!これじゃあ救助にも...えっ?」


 その者は見た。

魔物の本質を。

 その者は見た。

...魔物かれらの頂点を。


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 それは普通ではありえな生態をしていた。

 それは周囲の魔物エサを食べながら来た。

 それは、街の家屋を食べながら来た。

 それは自分の血肉を食べながら来た。


 あらゆるものを貪欲に、無差別に喰らう存在。


暴食竜グラジアス...の変位種。

貪喰竜どんしょくりゅうグラッジディアス。


今回発生した暴走スタンピード原因ボスである。


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 彼らの希望はここで潰えた。

この世界ゲームに降り立った者が居た街は...一夜にして消えた。


 その後、貪喰竜グラッジディアスは討伐された。

各国の上級職、並びに特殊職の連合によって討伐された。


 しかし...彼女、桜雪おうせつはこの世界ゲームを去った。

彼女の心は...完全に折れた。折られてしまった。

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