第2話 理不尽なランダム要素と理不尽なランダム要素

『とりあえず、あんたの罪状はこんなものだ』

「えーっと...まぁわかりました」


 まとめた感じ、俺の罪状は〈第二王女殺害未遂〉〈殺人未遂〉〈王族傷害罪〉の三つ。特に重いのは〈第二王女殺害未遂〉と〈王族傷害罪〉で、次に重いのが〈殺人未遂〉なので、結構すべて重い。

 いや本当にランダム要素が強いと聞いたが理不尽すぎるだろうさすがに。


『さて、そういえばあんたの名前はなんだったか?』

「ん?あーここで色々決めるのか。だったらスタート方法も決めさせてほしかった」


 さて、プレイヤーネームは基本統一するけど...このゲームで、しかもこの罪状で統一ネームはやりたくないな...と、いうことで。


「俺の名前はウェイン・バーダス。好きなほうで呼んでくれ」

『おーけーバーダス。次に、どういう見た目だったか覚えてるか?』


 次は容姿の決定か...まぁ現実基準で色々弄るか。

まぁ髪色は...銀、いや派手すぎるか。まぁ赤黒でいいか。基本黒色に見えるようにして光の当たり具合で赤も見えるようにしてっと。

 次に...というか現実基準にするとほとんど変えるとこないな。まぁ仕方ないか。

次は目か。こっちは普通に黒でいいか。変えるのめんどうだし...


 さて、次は...あれ?服装の欄が選べなくなってるけど...ああ、囚人服かぁ。

まぁ囚人だしな...まあいいか。次は...職業か。まぁMMOだしあるよな、そりゃ。


 えーと、まず選択不可能なのが旅行者トラベラー神官プリースト、僧侶、騎士ナイトの4つ。なぜ就けないのかは考えないものとする。

 次に選べるのが...たくさん。いやまて、本当に多いんだ。あげるのが面倒になるくらいにはおおい。

ま、まぁ個人的に面白そうとかやってみたいのをあげていくか。


 まず呪術師シャーマン魔法使いソーサラー召喚術士サモナー死霊術士ネクロマンサーの4つ。うん、見事に魔法系である。

 仕方がないでしょ!現実じゃできないことをするのがVRなんだよ!魔法使いたいでしょ!


 さて、少し取り乱した気もするけどおいておいて、どれにしようか...よし、こんな時にはダイス機能だ!このゲーム特有なのかわからないけど、現在の画面からダイスを振ることができる機能があるんですよ。

 というわけで、ダイスロール!


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1d4→3(召喚術士サモナー

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 結果は召喚術士サモナーに決定と。

ついでに召喚術士サモナーの説明も見ていこう。


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召喚術士サモナー 現在Lv:1 最大Lv:100


 倒した、あるいは契約した魔物モンスターをカードと自分の魔力を媒介に召喚し、ともに戦闘することができる職業。

 この職に就いたときにランダムで最初のエリアに現れる魔物モンスターの召喚カードが配布される。

 召喚術士サモナーの固有スキルである〔契約コントラクト〕を使用することで魔物モンスターをカード化することができる。

 召喚術士サモナーの固有スキルである〔カード化〕を使用することで倒した魔物モンスターを一定確率でカードにすることができる。確率はスキルレベルで決定される。

 魔物モンスターは成長せず、戦闘回数が一定数に達すると種族変化、または種族進化が起きる。

 ステータスは基本変動しないが、装備によって変わる場合がある。

 体力HPはカードに戻すことで徐々に回復するが、自分の魔力を消費することで消費した分回復することもできる。

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 さて、いろいろ情報が出てきたがそこらへんの確認はあとにして、とりあえず決めることはこれで全部。


「こんなところかな」

『そんな見た目だったか。ずっとフードを深くかぶっててわからなかったぜ』

「ああ、そういう風にして辻褄を合わせるのか」

『さて、そんじゃまぁこれからどうする?おそらくバーダスの罪状じゃぁよくて無期懲役だぜ?』

「あーまぁそりゃそうか。たしかに王族殺そうとしたならそんなになるよなぁ」

『だろ?まぁここから出る方法が無いかと言われれば...ある』

「本当か?それ教えてもらえる?」

『いいぜ。どうせ俺は使うつもりはなかったからな。実は、ここの牢屋の鍵ってぶっ壊れてるんだよ』

「いやなんで?ここ重罪人がいる牢屋だよね?」

『そりゃもちろん俺が壊したからに決まってんだろ』

「ええ?どうやって?」

『俺の職業は高位鍵破壊者グレートキーブレイカーだ。この程度の鍵を壊すのなんて朝飯前よ』

「なにその鍵だけを確実に破壊しそうな職業は。限定的すぎるだろ」

『そうでもないさ。人ってのは大事なものを入れたものはたいてい鍵をかけるもんだ。その鍵を壊せるってことは盗み放題ってことだろうが』

「あーまぁいわれてみれば?けど盗むのって人にばれないようにするとか必要じゃない?」

『そんなもん盗人やってればいやでも身につくわ』

「あーそれもそうなんだけどさぁ...」

『まぁこまけぇことは気にするな。それより、ここから出るんだろう?』

「まぁ出たいけど」

『それなら、牢屋を出て左にまっすぐ行けばいい。そうすりゃ階段が見えるから上に行けば【獄牢】にいる奴らより罪が軽い奴らが入る【厳牢】に出る』

「【厳牢】...名前てきには全然重そうな牢屋だな」

『そりゃそうだ。牢屋はまだまだある。【厳牢】の上の【粛牢】、その上の【罪牢】の合計4つだ』

「んー4つしかないって考えればいいのか4つもあるって考えればいいのかわからないな...」

『まぁそうだな。ちなみに、どの階にも階段近くに2人の看守に見回りに2人、階段の踊り場に隣接している看守部屋に2人の合計6人がいる』

「結構おおいな。もしかして【獄牢】にいる看守が一番レベル高い?」

『まぁそりゃ一番下だからな。ちなみに俺が確認したところ平均レベルは35くらいだ。一時期は70とかあったから今はだいぶ優しいな』

「いや...俺、レベル1なんだけど...」

『あん?あー...まぁ頑張れ』

「はい。ちなみにあんたのレベルは?」

『俺か?俺のレベルは51だ』

「強くない?ここの看守だったら余裕で倒せるじゃん」

『まぁこのレベルは高位鍵破壊者グレートキーブレイカーのレベルだからあんまり戦闘用のスキルとかはないから楽勝かと言われればあんまりだな』

「へぇー。戦闘用スキルってやっぱり戦闘系の職業についてないと取得できない?」

『まぁそりゃな。まぁ転職しても関連のある職業ならスキルは使えるからまぁそこらへんは色々考えな』

「ほーん。まぁ今は良いかな」

『まぁそりゃそうか。今は脱出するのが最優先だもんな、バーダスは』

「いやほんと。ちなみに、ここの看守って魔物モンスターじゃないよね?」

『何言ってやがる。当たり前だろ。立派な人間だ。もちろん倒して気絶させるまでなら〈傷害罪〉だが気絶している奴を攻撃して殺した場合は〈殺人罪〉になるから気をつけろ』

「あーまぁ俺もあんまり殺したくはないけども...」

『ちなみに人間が相手の場合、気絶させるだけでも経験値は手に入る。まぁ殺した場合にも経験値は手に入るから2度手に入るチャンスはあるが...戦争中の敵国か、盗賊以外を殺した場合は〈殺人罪〉だから気をつけろよ』

「やっぱり盗賊とかいるんだな。そして国もこの国以外にもあると」


 さて、今一度軽く整理をしよう。

まず、現在いるのが【獄牢】。そこから上に行くと【厳牢】、【粛牢】、【罪牢】と続いていく。

 この【獄牢】の平均レベルは35で、現在の俺のレベルは1。


 うーん絶望しかない。まぁ話の続きでも聞こうか。


『整理終わったか?じゃあ続きだ。【罪牢】を上がると【レシズム王国:兵舎】に出る。そこから外に出れば【レシズム王国】だ』

「それって脱獄しても王国内には滞在できなくない?」

『それは問題ない。後ろの張り紙を見てみな』

「張り紙?」


 いわれて後ろを見てみると確かに張り紙があった。まぁ結構ぼろぼろだけど。


「えーとなになに?もし【獄牢】から脱獄できたものは無罪放免とする?ナニコレ都合よすぎない?」

『それほどまでにこの牢屋全体のレベルが高いんだ。今まで【獄牢】から脱獄できたのはたったの5人だ』

「5人?結構多くない?」

『ちなみにそのうちの1人は俺だ』

「あんたかい。まぁこの牢屋について異常に詳しいし本当なんだろうな」

『あとの4人は...まぁ脱獄できればいやでも目にするさ』

「いやでも?」

『ああ。せっかく脱獄したのにまた色々やって指名手配されてるからな。国中に手配書があるはずだ』

「あぁーなるほど。つまりそれほどやばい人じゃないとここから脱獄できないと」

『あーまぁそういうことになるかな?まぁ説明することはこんなところかな』

「あ、これで終わり?」

『ああ。まぁほかに聞きたいなら上に出てからギルドにでも行くんだな』

「ギルドって?」

『冒険者ギルドってやつだ。まぁほかにも商業ギルドや錬金ギルドなんかもあるが...そこらへんはあまり行かないからわからんわ』

「そっかぁ。ま、いろいろ世話になったな」

『おう。ま、餞別でこれをやるよ』


 そういうと小さな肩掛けのポーチのようなものを渡してきた。

アイテム名はアイテムポーチとなっている。


『そいつの名前はアイテムポーチ。盗品でなければなんでも入れられる便利なものだ。中の空間が拡張されていてまぁこの牢屋分ぐらいの広さがあるが、入れる物は入り口より大きいと入らない』

「へぇー便利だね。いいの?こんな便利そうなの」

『ああ。どうせこの牢屋に入る前に盗ってきたものだからな』

「えぇ?盗品じゃねぇか」

『別に押収されてないんだからいいだろうが』

「いやそういう問題じゃないんだけど...」

『押収されてないってことは持ち主はすでに死んでるか牢屋に入ってるかのどっちかだ。そして、この世界において遺品は30日たつと所有権が放棄される』

「へぇー。つまりこれは、正式に所有者があんたのアイテムポーチってことか」

『そういうこった。(まぁ...それ以外にもスキルでどうにでもできるがな)』

「ん?何か言った?」

『いやなんも。まぁそんなことより、中に入ってるやつも確認しとけ。俺は盗ってから中を見てないからなんか入ってるかもな』


 あ、これが初期アイテムなのか。

ネットで見た感じ、最初に渡されるのは現在就いている職業で使用可能な武器、初級回復ポーションが5本、初級魔力ポーションが5本渡されるらしい。

 まぁその渡され方がランダムなんだけど。ある人は馬車の御者から、ある人は宿屋の主人から、またある人は討伐した魔物モンスターの体内からでることもあるらしい。

 渡されるタイミングもランダムで、俺の場合はアイテムポーチもついてきたけどこれもランダムで決まるらしい。ランダム要素がありすぎだろこのゲーム。

まぁ今更なんだけど。


 さて、さっさと中身を確認しようか。

どれどれ?中には[粗悪な悪魔崇拝者サタニストの杖]と[初級回復ポーション]が5本、[初級魔力ポーション]が5本とネットに書いてあったとおり...じゃないな!

 なんだよ悪魔崇拝者サタニストの杖って!俺は召喚術士サモナーなんですけど!?詳細説明は!?


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悪魔崇拝者サタニストの杖 装備可能職業:魔法系職業


 基本的に悪魔崇拝者サタニストが装備している杖。

悪魔崇拝者サタニストの固有スキル〔供物オファリング〕に使用する素材、魔力の量を10%軽減する。

 魔法系スキルの消費魔力を5%軽減可能。

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 oh...たしかに、魔法系職業なら装備可能だけども...さすがにターゲットが広すぎやないか?

 けど...軽減可能?軽減じゃないのか。なんか理由がありそうだなぁ。まぁいいか。


『おお、装備が入ってたのか。よかったじゃねぇか。それにポーションまであれば基本戦えるな』

「まぁ...召喚術士サモナー用のじゃなくて悪魔崇拝者サタニストの杖だったけどね...」

『あーまぁそれは俺が取ったのが悪魔崇拝者サタニストだったんだな。まぁ運が悪かったな。それにたしか魔法使い系の杖には消費魔力軽減があった...はず...だが...』

「ん?なんで歯切れが悪くなる?」

『あーまだ見てないのか。召喚術士サモナーの固有スキルの〔召喚サモン〕だが、消費魔力量によって召喚された魔物モンスターの最大魔力が決定される』

「へ?てことは...」

『そう。消費魔力を軽減するってことは、その分召喚された魔物モンスターの最大魔力が少なくなるってことだ』

「えぇぇー。じゃあ意味ないやん」

『そうなんだよなぁ...まぁ、がんばれ』


 なんということをしてくれたんでしょう。

自分を強化するはずの装備が自分を苦しめてくるではないですか。いやふざけんな。

 いやまぁ消費軽減してるから強化はしてくれてるんだよな。そのついでに俺の魔物モンスターを弱体化してくるけど。


「はぁ...どうすっかな、これ」

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