第19話

あの書き初めを剥がさない思春期。きみと両親の愛。いや、深いことは知ってるけど、わたしだって負けないと、思ってる。



「…俺、結実のことで後悔したことないから、今回もきっと…って思う。でもやっぱり約束はできない。けど、こんなの、絶対くたばれないな」



ほら。


伝わった。届いた。



わたしはきみに近づいて、小旗くんの涙に初めて触れた。


屈んでくれる、頼ってくれる、きみがいい。すごく、やっぱり、とっても好きだよ。



「最後じゃないよ」



そう言うと、小旗くんは答えるみたいに、重なるだけのキスをした。


ちょっと長くて、でも、無理のないそれはすごくあたたかい。


無理なんかいらないくらい、元気になってね。また必ず出逢おうね。



その時はあの日のつづきでもしようよ、BARに行った後にでもさ。


後悔してないって言ってくれて、嬉しかったよ。




「結婚するなら10年後くらいかな?」


「んー…25か。妥当だな」


「まずはそこまで目指してね」


「ん、わかった。希望にするよ」




未来はわかんないからこそ、想像して、甘い夢を描いて、それを希望に、生きていくことがある。未来があるから。


わたしときみの道はちがう。だけど願う希望は同じだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る