第17話
あの時、傍に行って、涙を拭くべきだったんだ。たとえ、自分も泣いてしまっていたとしても、きみにはきっと誰かが必要だった。
「桜川結実は、それでいいんだ」
「…っ」
「描いた未来を希望にして生きることができるなら、そうしていいんだ」
わたしは必要な時に傍にいなかったのに
きみはどうしてそれでも、優しいの。
「なら…いつか結婚して」
「え、結婚?」
「何年でも待ってるから、一緒に生きて」
これは酷な願いだろうか。
でも、今、体育館から聴こえる不確かな歌詞のメロディーと、たいして変わらないと思う。
水槽の魚は、あれ以来減っていない。
きみが悲しまないように、きみが学校に来なくなってから、わたし毎日餌をあげに来たもん。卒業してからも大丈夫なように、ちゃんと後輩とか先生に頼んだもん。
にわとりちゃんのお世話だってしっかりやったよ。愛着わいて、離れ難いよ。
「きみが生きる場所は辛いことが多いと思う。わたしとはちがう道だと思う。それは悲しくてたまらないけど…それでも、同じだけの時間が流れちゃうんだから、
だから小旗くんだって、未来を理想たっぷり描いたっていいんだよ」
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