第15話

なかなか飲んでくれないから、無理やり飲ませた。


こんな時なのに、最後のキスにはしないと、心のどこかで決意しながら。


涙がぼろぼろ溢れたのは、単純にこわかったんだ。きみがいなくなったら、どうやって生きていけばいいのかなって思ったら、幽霊よりも不審者よりも共食い生物よりも、何よりもこの世が恐ろしくなった。



そんなわたしを、きみは細目で見つめて、涙を指先で拭いてくれた。震えてても倒れても、器用なきみが愛おしい。


「ごめん」


上手くできない呼吸よりも優先するみたいに、何度もそう言っていたの、悲しかったよ。



その発作は、その日の夜には安定して、何かの処置をした後そのまま家に帰れた。次の日小旗くんは学校に来なかったけど、わたしはなんとなく、飼育小屋に足を運んだ。


きみは私服のまま、フェンスの中にいた。



なんでいるのか尋ねると「今日委員の日じゃん」とオハヨウみたいなトーンで言ってたっけ。


顔色が良くないきみに意識を持ってかれていたからよく覚えてない。


ただ、一言。



「もーこれ以上は耐えられないから、別れよ」って、そんな一言。その場で泣きそうになったけど、意地で耐えた。

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