第13話

──── 別れの前日、わたしは初めて小旗くんの家に遊びに行った。


小旗くんの部屋はミーシャカラー。ベッドカバーがチェック柄で可愛かった。心臓がくすぐられた。雑に置かれた少年漫画とか、読まなそうなミステリーの文庫本に挟まったしおりとか、子供の頃見たピーターパンの絵本とか、CDとか、なんでかな。そういうのを見ただけで、ぎゅっと恋心が増していく。



壁に飾られた書き初めは小学3年生の時書いたもの。表彰されたからお母さんが得意げになって飾りだしたんだって、ぶっきらぼうな言い草。愛おしい。



その空間にテレビはなかった。


部屋で一人になった隙に散策したけどえろ本もなかった。



いつも時々しかしないけど、その日は、キスをした。なんでそんな流れになったのかわかんないけど、なんか、とっても好きだと思っていたら、気づいたら、重ね合わせていたくちびる。


それはいつもとちがった。



だんだん深くなっていくそれは、プールで溺れた時の苦しさに似てると思った。中1の時に授業中溺れたことあるんだ。あれは本気でこのまま死ぬかと思った。

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