第12話

きみができないことが、わたしにはごく自然にできる。


それは確かに埋まることのない、巨大なちがい。



「全然よくねーよ。俺、担任にブチギレたからな」


「先生は悪くないんだよ。わたしが泣いて頼むもんだから、教えるしかなかったんだよ」


「…泣いたんだ」


「そーだよ。小旗くんは泣かせたくないって思って別れを選んだんだろうけど、結局わたしはたくさん泣いちゃった。でも、あの日はじめからフラれてても、絶対泣いてた」



だから。


だからさ、お願いだよ。




わたしのことで後悔しないで。




それだけは絶対、ゆるせない。




「くすりを飲んでること、知ってた」


「………」


「わたしを好きなことも、わたしが好きだってことを知ってることも、知ってた」


「……結実」



「ごめんね、苦しかったでしょ。あの日、本当に苦しそうだったもん」



「結実、それ以上言うな」




好きだから。


好きだからこそ。


もう重ねるだけじゃ、足りなかった。



「別れようって言われた時、諦めなかったんだなって…嬉しかったのに」



足りなかったけど、できなかった。

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