第11話

別れた後しばらくして、やっと気持ちが落ちついてきた頃、わたしは小旗くんの担任の先生に無理矢理聞き出した小旗くんの居場所に足を運んだ。


初めて行った場所だったけど。


けれど、心のどこかで、いつか行く準備をしていた気がする。



「うん。実はそうなの。もしかして受けとった?」



花だけで恥ずかしかったから、カードとか付けなかったんだけどなあ。



「結実だって確信はないにしろ、ドアの前に落ちてたら俺宛だってわかるよさすがに。一人部屋だったし」


「そっか。まあ、届いたならよかったよ」




思いを込めた三輪の青いバラ。


花言葉を知られたらクサい、なんて笑われそう。


笑ってほしい。ふって息を吐くように笑う、ちょっとバカにしてくるような笑い方が、好きなの。可笑しいよね。



そんなことを考えていた。だけどわたしはこの日、バラを渡せなかった。



まるで生きることを諦めたように静かに泣くきみの横顔を小窓から見たら、なにを言えばいいのかわかんなくて、こわくて、気づけばバラは床に落ちていた。


わたしはその場から逃げるように走った。


きみは走れないってのに。

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