第4話 やっぱりここは日本だった
オーロラにそっくりな女の子が乗る車の後をこっそりつける、銀色に光るアリの魔物。これ、端から見たら人類の生存圏を脅かすヤバい魔物みたいだよね。
絶対見つからないように細心の注意を払って移動していると――
【スキル 探知を手に入れました】
はい、いただきました。超有能スキル探知でございます。これで、距離を取っても大丈夫……かと思いきやレベルが低いせいか遠くの方は探知できませんでした。
仕方がないので、必死こいて走ってついていきます。道が悪くて車のスピードが出ていないのがせめてもの救いだ。
車を追いかけて走ること約二時間、幸い他の魔物に襲われることなく目的地に着いたようだ。
道中、そうじゃないかと思っていたけど、目的地についてはっきりとわかった。ここは成田空港だ。多分、犬吠埼灯台から成田空港までの道のりだよこれ。
成田空港の周囲にはバリケードのようなものが築かれていて、ここで人間が魔物の侵略に耐えながら生活している様子がうかがえた。
車が正門らしき所に着くと、バリケードの上から冒険者らしき人が顔を出し、家族を確認した後門を開ける。
うん、ここまで来たらあの家族は大丈夫だろう。
僕はこの辺りを拠点としてレベルを上げながら、当面はあの家族がいる避難所っぽいところを守ることにした。できれば、今何が起こってるのか情報を手に入れられるといいんだけど。
僕は成田空港は周りを山で囲まれているので、まずは安全なところを探して進化せねば。山の中はちょっと危険そうだから、街の方に行ってみるか。
(確か西側に成田市があったよな)
僕は覚え立ての探知を駆使しながら、魔物達に見つからないように西へと移動する。すると、すぐに大きな街が見えてきたのだが、建物は無残に壊され、人々の気配はなかった。
逆にムカデ型の魔物が何かを追いかけている場面に遭遇した。まさか、逃げ遅れた人でもいるのか? 僕は気づかれないように背後から巨大なムカデを追いかけた。
キャイン!
ムカデが行き止まりに何かを追い詰め、とぐろを巻いて絡め取った。その何かは、短い悲鳴を上げジタバタともがいている。
(あれは……犬か?)
どうやら、ムカデが追いかけていたのは犬のようだった。人間じゃなくてよかったけど、せっかくここまで来たから犬を助けてあげよう。
鑑定したらムカデは僕と同レベルだった。確かムカデは熱に弱かったよね。火魔法を使えるといいんだけど。僕は以前、火魔法を教えて貰った時のことを思い出した。
【スキル 火魔法を手に入れました】
(ファイアーボール!)
ドゴォン!
出た! ファイアーボールがでました! 僕が放ったファイアーボールは、狙い通りにムカデのぎりぎり手前に着弾し爆発を起こした。その熱で、ムカデのとぐろが緩む。その隙に無事、わんちゃんは逃げ出せたようだ。
よし、トドメだ!
(ロックインパクト!)
イメージではちょっとした隕石のつもりだったけど、今の僕の魔力じゃ少し大きめの岩しか生成できなかった。でも、ムカデの頭を潰すだけならこれで十分か。
僕は熱によって動きが鈍くなっているムカデの頭に、岩を落として潰してやった。ああ、レベルがマックスだから経験値が無駄になってしまったか。もったいない。
キャン! キャン! キャーン!
ムカデを倒してすぐに、物陰から先ほど襲われていた犬が現れた。ふむ、これは柴犬だね。キャン、キャン言ってるけど、何を言っているのかはわからない。多分お礼を言ってるんだと思うけど……
【スキル 言語理解を手に入れました】
はい、都合よく来ましたよ。言語理解スキル。これがあればあら不思議、犬の言葉だってわかるようになりますよ。
「ぎゃー! また
うん。どうした柴犬? なぜに語尾が『にゃー』なのだ? おかげで、話が全然頭に入ってこないぞ。それに
ギシャギシャギシャ!
僕は柴犬に話しかけたのだが、メタルな口は不快な金属音を発するだけだった。この姿でしゃべれるわけがない、何とか僕が味方だと伝えたいんだけれど……
【スキル 念話を手に入れました】
……なぜにこうも都合よくスキルが? なんだか怪しい気もするけど、でもこのスキルって以前持ってたスキルなんだよね。脳内アナウンスでは手に入れたって言ってるけど、僕からしたら思い出したって感じが強い。
〈おーい、聞こえるか?〉
〈ぎゃ!? なんだにゃー!? 頭の中で声が聞こえるにゃー!?〉
〈とりあえず、会話にならないから、その『にゃー』を辞めてせめて『わん』にしてくれないかな?〉
〈もしかして、この声は目の前にいるアリの
犬ってこんなに表現豊かにしゃべれるのか? アイデンティティーと言っちゃってるし。ってか、飼い主も喜んでたって言ってるけど、人間には『わん』しか聞こえてないだろ。その辺わかってないのかな?
〈とりあえず、一度でいいから試してみてくれないか?〉
一応、ダメ元でお願いしてみる。
〈仕方ないわん。絶対に合わないと思うけど、試してやるわん。……あれ、なんかしっくりくるわん!? これは大発見だわん!〉
いや、そりゃしっくりくるだろうさ。犬なんだから……
それにしても、ずいぶん感情豊かに話す犬だね。僕は犬の感情なんて、好きか嫌いかしかないかと思ってた。それとも、この犬が特別なのか? ちょっと鑑定してみるか。
種族 柴犬
名前 まる
ランク F
レベル 2
体力 7/17
魔力 10/10
攻撃力 11
防御力 9
魔法攻撃力 8
魔法防御力 7
敏捷 16
スキル
逃走
称号
なし
むむむ、レベルがひとつ上がってるな。もしかしてこの犬、
〈ねえ、君は
〈そうなんだわん。 オイラの家族が
それから、小さいムカデに見つかって、襲われたんだわん。無我夢中で噛みついてたら、偶然、頭を噛みつぶしたんだわん。ちょっと体液が口に入って気持ち悪かったわん。その時から頭がすっきりして、色んなことを考えられるようになったんだわん。そしたら、あの大きいのが現れて……随分長い距離を逃げてきたんだわん〉
やっぱり
〈そうか。それは辛かったな。家族のことはその、残念だけど、せっかく生き残ったんだ。元気出してくれ〉
〈くぅーん、アンタはいいやつなんだわん。オイラは強くなりたいんだわん。今度は家族を守れるくらい、強くなりたいんだわん。アンタはすごく強そうだわん。オイラを一緒に連れて行ってほしいわん〉
……そうか。そうだよな。
僕も一人じゃ寂しかったから一緒に行動するのも悪くないかもね。それに、これから進化するのに見張りをしてくれる仲間がいるのは心強い。
〈よし、僕も丁度仲間がほしかったんだ。一緒に
〈この世界で生き残るためには強くなるしかないんだわん。そのために
転生早々仲間ができてよかった。向こうの世界ではしばらく一人だったからね。仲間がいれば生存確率も上がるはずだ。そして、より強くなるために進化をしなくては。
僕はまるを連れて、隠れて進化できそうな建物を探しに向かった。
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