悪意のドミノ倒しが起こらなくて良かったという話
肥後妙子
第1話 距離感がバグっていた当時
私は中年よ!でも昔は若かったの。当たり前なんだけどね。その若い頃、よく行ってたスーパーマーケットがあったわ。最近は、もっと近所に別のお店があるから行ってないんだけどね。
で、その昔行ってたお店にちょっとカッコ良い店員さんがいたのよ。たぶんアルバイトの男のコね。十八から二十歳くらいの若い子だったわ。私ったらその男の子に好感を持っちゃったのよ。
だからそのスーパーに通った訳でもあるの。まぁ、買い物が一番の目的なんだけどね。
件のお店に着くと、あの店員さんはどこかなぁなんて探しながらお店をうろついたものよ。仕事している姿を見つけると、さりげなく彼の近くの商品棚に向かったりしてね。あ、貴方、今、気持ち悪って思ったでしょ。ええ、ええ、分かってますよ。ちょっとストーカーっぽく見えちゃう行動よね。うーん、私もあくまで店内で買い物がある時のついでにやってただけだし、彼の個人情報とかを探ろうだなんて夢にも思わなかったんだけど、まあ、距離感バグッてたわよね。若気の至りという表現で済む事しかせずにおいて本当に良かったわ。彼にとっても私にとってもね。
まあ、すぐに彼に対する片思いというか好意は消えちゃったんだけどね。
なぜかって?彼がある日、似合わない髪型にしてきたからよ。カッコ良さ大幅ダウンだったわ。
私、すぐに思ったの。これは私に対する拒否反応だわってね。きっと彼は私が彼に好意を持ってると気がついたのよ。それに不安を感じて魅力を減らす外見にしたのだわって。魅力的じゃなくなれば私が興味を無くすと思ったんじゃないかしら、それだけ私を嫌ってるというか怖がってるのねって、私、答えが思い浮かんじゃったの。裏付けは無いんだけどね。何よりも実際、彼の外見の魅力が半減したら、私、ときめかなくなったし、もういいやって感じになったわ。
まあ、以上の思い出なんだけど、最近考えるの。深刻な揉め事にならなくて良かったなぁって。私、彼の外見は知ってるけど人柄は全く分からないのよ。彼が私を嫌っていたとして、悪意で対応したらどうなったかなって。
例えば彼はメチャクチャ被害者意識の強い人で、私の事を自分に付きまとう異常者と結論を出し、上司に報告し、上司も怖い人でそれを信じて私を出禁にして、それを知った関係者が他人に喋っちゃって、私が変な噂を流され苦しめられる、という可能性だってあったのよね。まあ、悪意が皆無の人なんていないんだから、気にしだしたらきりが無いんだけど、悪意のドミノ倒しが起こらなくて良かったなぁと思ったわ。
とにかく、髪型を使って彼が私を拒否した日以来、怖がらせるくらいなら他人との距離感はよく考えよう、慎重になろうと肝に銘じたわ。
彼は私の事を変な気持ち悪い客だったなぁと今でも記憶してるかもしれないけど、しょうがないわよね。ま、とにかく、軽傷の思い出よ。若かりし日に学習したわ。
おわり
悪意のドミノ倒しが起こらなくて良かったという話 肥後妙子 @higotaeko
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