第10話
腰が無いなってしまかと思われた芝生整地作業から早一時間。アヤとアヤが持っているプリントを件のメグミちゃん家に届けるべく母親所有の軽に乗せて走る事20分。いや地味に遠いな確かにチャリ通なんて考えられないわ、地獄見るだろコレ。
そんな事を考えつつも助手席にアヤをアヤの膝にはルシファーを乗せながら車を走らせる。ちょっと危ないだろうが幸い交通量は多くないから大丈夫でしょ(マネしないでください)帰りにラッシュに嵌まるかもしれないがそれはまぁご愛嬌といったところで。
「…それで?妹殿に聞くことがあったんじゃないのか?」
「ああ、そうだすっかり忘れてた。Heyアヤ、メグミちゃんってどんな子?」
「音無メグミさんは精華院女学園に通う15歳の女性です。性格は優しく頼み事は断らないため良い様に使われている時がありましたが、良い様に使っていたグループの評判を失墜させ発言権を低下させました。そのグループは教室の隅と自身の机しか安全なテリトリーはございません。いかがでしたでしょうか?」
「怖すぎんだろお前、バーサーカーじゃん。」
後半のエピソードが固め・濃い目・多め過ぎて人物像一切不明じゃん、ホウレンソウクリアの存在感しか無かったぞ。もうちょっと人物像を掘り下げてもらいたいんだけど。
「あー、妹殿もう少しこう…メグミ殿自身のプロフィールが知りたい。天使の奴らは幸せな要因を破壊することで絶望させ天使側に有利な状況を作ろうとしているのだから。」
「メグミちゃんの話ね、あの子は私が介入するまではお父さんとかお母さんとの関係があんまり良くなかったんだって。で暗くなってたけどノリ悪いってなってモノ隠されたりお金盗られたり…。結構あったらしいんだけどそれを私が発見し味方になって、最終的に乱闘沙汰になったの。で、私が盛大にやっちゃったもんだから当事者の一人として保護者呼び出しが入ってそこでいろいろと話し合いをしたら和解したっぽいよ?私は停学2日食らってる間に起きたことらしいから詳しい事分かんないけど。」
「何したんだよお前。(戦慄)」
「危険な方のシャイニングウィザードを主犯格に叩き込んだ。気持ちよかったよ。」
「比喩抜きで顔無くなるぞ。まぁよくやった。」
「とんでもないことをサラッとやっているがほぼほぼ彼女の深い所は何も分かっていないと言っている様なものじゃないか。もう少し家庭事情を知りたいものだがね。」
「あの時結構頑張ったんだよ?それをそんな風に言われるのは悲しいな~?ルーちゃーん?」
「ひゃめ、ひゃめてくりぇ…ひょさなぎょにょひょうにひょひょうぉみょちみょちするのは…。」
これもう分かんねえな…。とはいえあの子の幸せの要因が察せられない以上はぶっつけ本番で聞いてみるか?あなたは今どうして幸せなんですか?って怪しい宗教勧誘かよ、俺だったら逃げるわ。
「あの子が狙われる原因を察するしかないね~。幸せが天使に狙われる原因になるってのが肝なんだろうけどあの子の幸せになり始めたスタートに私が関わってるのは確実なんだけどどうやったら家庭環境改善につながるのか私にも分からないんだよね~。」
「そうは言うが君の行動がメグミ殿が彼女を変えたことは事実だ。きっと彼女は君の他者のために不利益を被ることを恐れない姿勢に感銘を受けたのだろう。そこから怯えを抑え込み家族と話でもしたのではないか?対話と相互理解の難易度が君たちにとってどれほどの難易度なのかは私には分からないが。」
「難しいもんだよ、長年一緒に暮らして血がつながっている者同士でも分かり合えない奴なんかザラにいるさ。それより忘れそうになるけどお前精神生命体ならなんで敵対してんの?齟齬無く思いが伝わるなら争いとか無縁じゃね?」
「思いが齟齬無く伝わるという事は譲れないものがより一層強く出るものだよ契約者。互いに引けなくなったら後は暴力に訴えるしかないのさ。」
「世知辛え~…。」
「ルーちゃんのつらい話はあとで聞くにしても天使に狙われてるってことは解決して幸せになったはずだよね?天使が狙うなら両親と…私かな?」
…確かに言うとおりだ。メグミちゃんが精神の柱にしているのが両親とアヤならその二つから拒絶されたら容易く絶望してしまうかもしれない。これは…選択を誤ったか?
「どうする?俺がプリント届けてこようか?直接合わせるのはまずい気がしてきた。」
「お兄ちゃんが行ったら訳わかんないことになっちゃうでしょ。これでも頼まれた事はちゃんとやる子で通ってるんだから。…なんかあったら助けてね?」
「天使が顕現していれば私が気配でわかるとも索敵は任せてくれていい。有事に備えて相馬もついていくという形なら多少不自然ではあっても拒否はされないだろう。今回は天使がメグミ殿の周りにいないかどうかだけを確認して引き下がるというのはどうかな?」
「今回はそれでいくか。アヤ異論は?」
「無いよ。…あ、そこ右に曲がったらとうちゃ…えぇ…。」
「住所間違ってないよな…?」
道を曲がるとそこは一般的な住居三つ分くらいの大きな家だった。いや、でっっっっっっか、マジかよ。もしかするとメグミちゃんって結構お金持ちだったりする?
「いやー…正直知らないんだよね。助けただけだし。…そう考えるとお礼にハンバーガー奢ってもらった時注文せずに席座って待ってたのもお嬢様だったからかなぁ?」
「じゃあもうそうなんだろウェイターが注文聞いてくる所しか知らなかったんだろ。てかマック奢らせたのかよ。」
「あわあわしてて可愛かったよ。現金持ってなかったのはビビったけど。」
ほなお金持ちのご令嬢やないか。庶民は人生でファーストフードを初めて注文するのは10歳って公的なデータが有るんやから。
違うこんな事考えている場合じゃないほらルシファー索敵飛ばせ。この家の範囲カバーできる?漏れとか無い?
「任せたまえ、これくらいは出力を上げれば…!…ふむ、天使はいないようだ。どうやら機先は制したと見てよさそうだ。あとは話題の人物に接触してこちら側に来てもらおうじゃないか。」
「なーんか順調すぎるんだよなぁ…嫌な感じだ。こういうのって最悪のタイミングで揺り戻しが来るからなぁ…。」
「なんかネガってんねお兄ちゃん。そう心配しなくっても大丈夫じゃない?」
アヤが玄関に取り付けられたインターホンを押す。ほどなくして年配の女性の声が響く。
「もし、どちら様でおられますでしょうか?」
「夜分遅くに失礼いたします。私音無メグミさんの同級生の御影アヤと言います。本日メグミさんが欠席されましたので今日の分の授業プリントを届けに参りました。」
「それはそれは、ご苦労様です。ただいま出ますので少々お待ちください。」
その声が聞こえ待つ事1分。クラシカルなメイド服に身を包んだばあやと呼ばれるに相応しい女性が出てきた。メイドさん常駐は流石にすごいな…。メイドさんはこちらに深々と一礼をしながら口を開く。
「本来であれば私共が伺うべき要件なのですが、お嬢様の大切なご友人の御影様の御手を煩わせる結果になってしまいこの不肖ばあや慙愧の念に堪えません。本日は御足労いただき誠に感謝いたします。」
「いえいえ全然!そんな事ありませんから!むしろこっちが恐縮してしまいますのでどうか頭を上げてください!えーと、えーと、こちらが本日分のプリントになります!」
「お預かり致しました。このばあやが責任をもってお嬢様にお渡ししておきます。誠にありがとうございました。…本来であれば歓待せずに帰すなど音無家に仕えるものとして言語道断ではありますがお嬢様の体調を鑑みて玄関での対応となる事平にご容赦くださいまし。」
「全然大丈夫ですよ!そ、それではこれで失礼します!」
パタパタと小走りで帰ってくるアヤを助手席に乗せ発信する。…何も情報得られんかったな…。
「そうでもないさ。というより今からが本題なのかもしれない。」
「何言ってんだお前もっと分かりやすく言ってくんない?」
「アヤが喋っている間ずっと索敵をしていたんだがこの家にいた人間の魂が外に出ていくのを感じた。恐らくは問題のメグミ殿ではないか?」
そういう大事な事はもっと早く言ってくれよマジで!
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