第9話
時が経って現在は12時、昼休みの時間にアヤから合流して情報共有をしたいとの連絡があったため指定された裏庭のほうに向かう。体調不良であることを祈るが欠席になるタイミングが俺とルシファーを焦らせる。
「どう見るコレ?」
「思春期の心は難しいから突発的に休みたくなることもあるだろう、単なる体調不良の線も否定が出来ない、一概に敵の仕業と決めつけるのは早計だぞ。…この間の悪さが何かしらの意図を感じさせるのも否定はしないがな。」
「アヤからの情報がないと動き方も決められないか。まったく、情けないお兄ちゃんで嫌になっちゃうぜ。」
声に出して考えを纏める今はルシファーが人迷わせの催眠なるものを張っているらしく俺を目的にしている人がいない限りここには辿り着けないらしい。マジでご都合主義催眠悪魔だなこいつ。そんなくだらない事を考えているうちにアヤが小走りで校舎から出てくるのが見えた。きょろきょろといった風情でこちらを探していたが俺とルシファーを見つけたのか速度を上げて迫ってくる。あ、途中から手で大きくバツの字を作っている。フライングクロスチョップされそう。そして到着し開口一番に
「お兄ちゃん!ルーちゃんを外で出すなんて何考えてるの!?用務員さんファンシーなぬいぐるみを持ってても何も言われないだろうけど空飛んでたらさすがに言われちゃうよ!」
「大丈夫だってドローンっていうから。」
「悪魔を玩具にしないでくれ。それとここには結界が張られている、このバカタレ契約者を意識して見つけようとしない限りは見つけることが出来ない。外部からの認識は私たちは路傍の石と似たようなものになっているだろうから大丈夫だアヤ殿。」
悪魔からの唐突な罵倒とすごくどこかで聞いた事がある説明に意識を持っていかれるがこのことを気にしている場合ではない、本題に入らなければ。
「まずはアヤちゃんはなんで休んだんだ?まずはそこを聞きたい。」
「先生たちには風邪っていう風に連絡が行ってたみたいなんだけど私が直接連絡したときにはすぐに反応が返ってきて「あんまり人に言いたくない」って帰ってきたの。今日の分の授業のプリントとかの届ける役は私が奪ってきたから放課後には届けに行く次いでにお兄ちゃんもついてきてもらうつもり。メグミちゃんもついてきていいって言ってるしね。」
「ついていくのは良いが住所とか何にも知らないんだけど大丈夫か?」
「これは私の仕事だよお兄ちゃん。任せて、全校生徒はさすがに無理だけどこんだけ理由が有ればたいていの人の家を教えてもらえるくらいには信用が有るんだよ?私この学校の王子様的ポジションについているんだから。」
さすが妹だ。さすいもと讃えたい気持ちでいっぱいだがこの通りの女子高の王子様的ポジションが行方不明だと何か問題がある風に思えてくるのでなるべく早く切り上げたほうが良いのかも知れない。ともあれ方針は決まった。放課後まで待つことになるが俺も仕事を抜けられないためもどかしい時間を我慢することにする。
「こうなると放課後までまた待ちの時間になるな。なんかやっといた方が良いことあるか?」
「もしかしたらちょっと遠いかも知れないからくるまを借りられるかお母さんに聞いといて欲しいかな。」
「了解した。…運転するのひっさびさだけど大丈夫かな。」
「お父さんの車じゃなかったら大丈夫じゃない?ラリーカー?みたいな感じだったよね。」
「そうだよな、あれはイカレマシンだからあれで行くとご近所迷惑なんてもんじゃないから。」
エンジン掛かった瞬間に爆発が起きたかと思うくらいの爆音が鳴り響くからなあれを借りたくはない。というわけでスマホで連絡し母親用の軽を借りてもいいかと連絡を入れる。
『母さんお願いが有るんだけど』
『何が望みなの?交渉の準備は出来ているわ。』
『なんでテロリストと対峙してるネゴシエーターになってんだよ。仕事を終わった後に母さんの軽を借りていい?』
『良いんだけど帰りに牛肉とお味噌とBCAA買ってきてもらっていい?』
『最後以外は了解。』
スマホをしまいながら親指を立てる。アヤも親指を立てて返す。
「BCAAって何?車の交換条件で買ってこいって言われたんだけど。」
「なんか筋トレの時に飲むプロテインの亜種らしいよ?最近お母さん筋トレに嵌まってるから。」
「そうか…まぁスーパーに売ってないもん頼んだ方が悪いってことでガン無視しよう。あー、今日仕事が終わり次第帰るから家で待っといてくれ。」
「りょー。早めに帰ってきてね?万が一って嫌だし…。」
「わかってるさ。安心しろ俺はギリギリの所で間に合う男なんだ。」
「余裕を持ってほしいもんだけどな~妹としては。」
「随分とまぁ余裕そうじゃないか。到着して待ち伏せ、とかは考えないのかね君ら。」
おやおや随分とまぁ慎重派な悪魔だこと。確かにお前がとられれば悪魔軍は総崩れだろうがこっちはこっちで日常をちゃんとやりきらないといけないんだよ。特にさらっと流されがちではあるが用務員さんも休憩こそ十分に取れるが構内もはや森だろとばかりに張り巡らされた木々の手入れなんかで結構大変なんだぞ。人生で初めて芝を刈ったわお金持ってるとこってスゲー。
そうじゃないわ、思考がすぐに飛ぶのは俺の悪い癖だな。
「まだ大丈夫だろって判断した理由は三つ。一つはアヤの連絡にすぐ返事が返ってきたこと。昨日の今日であいつ等に何かされたのならそもそも失踪する方が都合が良いんじゃねえのか?ここでメグミちゃんの意識を残す必要が向こうにはない。二つ目はアヤがプリントを届けに行くことが向こうに知られているのに拒否されなかったから。見られて困るもんわざわざ招き入れて見せないだろっていうのが二つ目。最後の三つめは…勘かな。」
「絶対思いついていないだろう。保護者と連絡内容が食い違っているのはどう説明するんだ?」
「仮病なんざお年頃にはよくある事だろ。俺も何回か体温計こすりまくって学校休んだことあるし。」
「そういうものなのか…私にはそういう経験がないから分からないな。」
「お兄ちゃん学校ずる休みした事有るんだ…ちょっと意外。私は学校サボったことないよ?」
「真面目ちゃんズだったのかお前ら。疎外感尋常じゃないわ今。」
思った以上の真面目比率に慄きながら時間も時間なのでアヤを教室に戻らせて一人…一人と一柱?で思案する。
ゴリ押してみたものの確かに違和感がある。あんまり人に話したくない事で休むか普通?風邪をひくことを恥と思っているタイプなのか?そんな奴いないだろ。熱出たらラッキーとばかりにゲームして悪化して親父に怒られるまでが恒例だったぞ。…そういえばアヤが生まれる前の話か…、そりゃ知らなくても無理ないな。
メグミちゃんがどんなことを人に言えないの範疇にするのかがとても気になってきたが人物像ミリも知らねえや。教えてアヤちゃん!
「…君がもう帰したからいないよ、妹殿は。」
「クソっ、どうして俺はいつもこうなんだ!頭が足りないなんてもんじゃねえだろ!」
どうしようも無いので仕事をしながら放課後を待つことになりました。あ、先輩次はなんの仕事するんすか?え、この広場の芝生全部整えるんですか?人数いてもめっちゃしんどい奴ですよねこれ。「手を動かせばいつかは終わる」?…うっす、頑張りまーす。
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