連絡を取るべきか取らざるべきか、本気で読者から意見を求めたい

　今年も、ヤツから年賀状が来た。

　昨年１０月からはがき代が２２円も値上がりして、８５円になった。

　親戚や友人は今年から年賀状じまいをして、ほとんど年賀状が来なくなった。

　それでも懲（こ）りずに年賀状を送って来たヤツは、ちょっと褒（ほ）めてやりたい。

　ヤツは高校時代、まぁまぁ仲が良い友人のひとりだった。

　毎日一緒にバカやるのが、楽しかった。

　高校を卒業してから、毎年欠かさず年賀状が届く。

　年賀状には、住所、氏名、携帯の電話番号、メールアドレスまで書かれている。

　危機感が足りない個人情報ガバガバマンか。

　年賀の挨拶文（あいさつぶん）には必ず、「会いたい、連絡を待ってる」と書き添（そ）えてある。

　俺は正直、会いたくない。

　卒業後に再会した高校時代の友人たちとは、ろくな思い出がないからだ。

　ひとりは、一緒に旅行へ行ったら、「今は金がないから立て替えておいてくれ、バイト代が入ったら必ず返す」と約束してまもなく、音信不通（おんしんふつう）になった。

　人伝（ひとづて）に聞いたら、「『金を返せ』と言われたくなかったから」だとよ。

　ひとりは、借りパク常習犯（じょうしゅうはん）で、のちに詐欺（さぎ）と窃盗（せっとう）で収容所（ブタ箱）行き。

　ひとりは、ドメスティックバイオレンスで警察沙汰（けいさつざた）になった。

　ひとりは、親友の恋人を寝取って略奪婚（りゃくだつこん）した。

　ひとりは、将来を誓い合った婚約者がいたのに浮気して駆け落ちした。

　ひとりは、ギャンブル依存症（いぞんしょう）で自己破産（じこはさん）した。

　ひとりは、ネズミ講（こう）セミナーへ連れて行かれた。

　ネズミ講（こう）ってのは、無限連鎖禁止法（むげんれんさきんしほう）で禁止されている悪徳商法（違法ビジネス）。

　ネズミ講（こう）ってまるわかりだったから、断って帰った。

　これ、マジで全部実話だからね。

「こんな作り話みたいなことが現実にあるのか」と、感動したよ。

　どいつもこいつも、俺を利用しようとしてきやがったから縁を切った。

　偏差値（へんさち）が最底辺（さいていへん）のバカ高校だから、ろくでもねぇバカばっかなんだよ。

　もちろん、俺も含めてな。

　高校時代の楽しかった思い出は、思い出のままで良い。

　今まで後悔しかなかったから、ヤツとも会いたくない。

　しかし２０年以上も、年賀状は届き続けている。

　凄（すさ）まじい執念（しゅうねん）だ。

　もしかしたら、本当に純粋な気持ちで俺と会いたいだけかもしれない。

　こんなに会いたがっているなら、一度くらい連絡を取ってもいいかもしれない。

　だが、連絡を取ったら面倒事（めんどうごと）に巻き込まれるかもしれない。

　家族に相談してみたところ、「絶対連絡は取らない方が良い」と口を揃（そろ）えて言う。

　結局、今年も連絡を取れずにいる。

　きっと来年も再来年もその先も、年賀状は届き続けるだろう。