プロローグ②意外な事実と警戒

 名もなき城の南南東側の森まで来たハクリュウ、タツキ、ミク、ユウ、クレイの五人はディアナの所に来ていた。勿論ちびシェルギオスと、ちびブラグジオスも一緒だ。


「フゥー、良かった。クレイが魔法の法衣をディアナにかけていてくれたお陰で魔物や魔獣に気づかれずに済んだ」


 ディアナにかけられた魔法の法衣をタツキはとる。


「まだ寝ていますね。でも、なんでこうなったんですか?」

「ハクリュウ、黒魔石の腕輪とペンダントのせいや」

「そのせいで体内へ魔力……マナを大量に取り込み増幅して、ディアナは体力を奪われて倒れたんだ。俺も昔、同じようなことで何日も眠ってたからな」


 それを聞きミクは、ウンウンと頷いた。


「そういう事もあったのら。あの時は、みんな心配で交互に看病してたのら。そういえばクロノアが一番に心配してたのら」

「クロノアが俺の心配をしていた。確かに目覚めた時に居たな。俺はてっきりなんかされたんじゃないかと周辺を見回した記憶がある」

「んー……やっぱり気づいてなかったのら。クロノアはタツキのこと好きだったのらよ」


 信じられない言葉をミクの口から聞きタツキは困惑する。


「待て……アイツが言ってたのか?」

「うん、知ってたけど……口止めされてたのら」

「……」


 返す言葉に困りタツキは黙ってしまった。


(クロノアは何時も俺をからかっていた。まさか……嘘だよな。だけど、なんでこんな時に言うんだよ。

 ミク……偶にお前、場を考えないで言ったり行動したりするよな。天然なのか? まあ……そこが可愛いんだけどな。怖い時もあるが)


 何かを感じ取ったかのようにクレイは口を開き話し始める。


「その話は、あとでええんちゃうんか? 今はディアナを運ばな」

「そうですね。何時までも、ここに居る訳にもいかないし」

「クレイにハクリュウ……そうだな。じゃあ行くか」


 そう言いタツキはディアナを抱きかかえようとした。


「タツキさん、待ってください。魔物の気配がします」


 周囲を警戒していたユウは即座に感知し鞭を構えている。

 それを聞いたタツキは腰の刀に手を添え辺りを見回した。


「ゴブリンか?」


 そうタツキに問われユウは頷き、この先に居るであろうゴブリンを鋭い眼光で睨みつける。


「何体や?」

「四……いや五体。その中に一体だけ……強い気配を感じる」

「ユウさん、五体ぐらいなら……みんなで対処しなくてもいいんじゃ」


 コクッと頷きユウは、ハクリュウの方をみた。


「二人残れば……十分だと思う。俺が残ったとして……あと一人は?」

「それなら俺が残ります」

「ハクリュウ……大丈夫なのか?」


 真剣な眼差しでタツキはハクリュウをみる。


「はい、一人じゃないですし」

「ならいいが……ユウの足だけは引っ張るなよ」

「……そ、そうですね」


 それしか返す言葉がなくハクリュウは苦笑した。


「なんとか……大丈夫。俺が……指示をだすから」

「お願いします」


 よく考えたらハクリュウのギルド【ギガドラゴン】(ハクリュウが改名しているが)の初代タツキと、二代目ユウが自分の目の前に居れば敬語を使うよな。


「それならいいが……ゴブリンを甘くみるなよ」


 そう言われハクリュウとユウは頷いた。


「じゃあ俺たちは、ディアナを避難させる。ってことで、ここを離れるぞ」


 ディアナを抱きかかえるとタツキは、クロノアとクルフが待つ場所へと歩きだす。そのあとをミクとクレイは追った。


「行ったようだな」

「はい、それで……どう戦いますか?」

「聞いてくるなんて……珍しいな……まあ……いいか」


 そう問われユウは、ハクリュウに指示をだす。

 指示を聞きハクリュウは即座に装備を変えて持ち場に向かう。

 その後二人は身構えゴブリンのくるのを待った。

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