プロローグ③予想外の魔物

 細身の剣を抜き構えるとハクリュウはユウより前の方で待機した。


(ゴブリンか……この世界のってみたことないから楽しみだ)


 緊張感がないようだ。


(そういえば……なんでユウさんよりも前で待機する必要があるんだ? でも指示どおりにしないと。でも……んー……)


 納得いっていないようだけど大丈夫なのだろうか……。


(本当にハクリュウが指示どおり行動してくれるのか? まあ、その時のために保険を用意しているから……多分、大丈夫だとは思う)


 そう思いユウは自分の前に待機させているサーベルタイガーへ視線を向けた。

 そうこうしていると、ガサガサと茂みが揺れる。


「ハクリュウ……来たぞ!」

「はいっ!」


 剣を構え直しハクリュウは茂みから出てくるゴブリンを待ち構えた。

 パチンッと鞭を地面に叩きつけユウはサーベルタイガーに《ゴブリンを攻撃しろ!!》と命令する。


 ――ガオォォオオオーン……――


 雄叫びを上げるとサーベルタイガーは茂みから出てこようとしているゴブリンへ猛スピードで向かった。

 すると茂みから出てきたゴブリンを素早く攻撃していく。

 ゴブリンの姿を確認するとハクリュウは剣先を後ろに向け体勢を低くする。と同時にサーベルタイガーが攻撃していないゴブリンへと猛ダッシュで駆けだした。

 だが姿をみてハクリュウは驚き立ち止まったあと素早く後ろへ下がる。


「ハクリュウ、なんで攻撃しない!?」

「思っていたよりも大きい。それにゴブリンじゃないので一旦、体勢を整えないと無理ですって」


 そう、ハクリュウの目の前に現れたのはゴブリンじゃなくてオーガだった。


 それを聞きユウは目を凝らしハクリュウの方をみる。


「オーガか……なんでゴブリンと共存してるんだ?」

「そんなの知りません。それよりも、どうしますか?」

「どうするも……こうするも……攻撃するしか……ないだろ! 仕方ない……そっちは、お前の判断に任せる」


 まあユウはハクリュウの実力を認めているので、そう言えるのだろう。これがタツキだったら別だ。


「はい、そうさせて頂きます!」


 迫りくるオーガに対しハクリュウは一旦、距離をおくため後ろに下がる。

 それをみてオーガは「ウガァー」と大きな口を開き叫びハクリュウを威嚇した。

 そのぐらいでは怯むわけもなくハクリュウはオーガとの間合いを取りながら装備のチェックを始める。相変わらず慎重だ。

 それだけではなく、ちゃんとオーガの動きを観察している。


(なるべくユウさんから離れた方がいいな。邪魔すると怒られるし……)


 随分と余裕だな。まあ判断は間違えていないだろう。過去にユウの邪魔をして、かなりの剣幕で何度も怒られている。

 それなので、こういう時に役に立ったようだ。

 既にオーガの視界にはハクリュウしかみえていない。

 ハクリュウからユウとの距離は、みえなくなるくらい離れた。


「このぐらいでいいか……装備も万全だしな」

「ハクリュウ、我は離れてみている」


 ちびシェルギオスはそう言いハクリュウから離れる。

 それを確認するとハクリュウはメニュー画面の装備一覧にあるセットボタンを押した。体が虹色に発光したあと、パッと黒龍装備へ変化する。


「兜だけ揃ってないけど……これでも十分だよな。それに侍バージョンだし」


 黒龍の刀を構えるとハクリュウは向かいくるオーガを見据えた。

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