第5話
タクシーの窓から外を見ていた。
「もう夜なのに、昼間みたいに人がいるね」
「ああ、そうだな。帰った時、俺も違和感あった」
高く立ち並ぶビルに、一階部分はショップが連なって、歩道をたくさんのひとたちが普通に歩いている。
私の地元だったらこの時間は酔っ払いか不良っぽい人しかあるいていない。
「もう、忙しいの終わったの?」
「いや、でも年末だから少し時間あるよ」
「いいとこ見つかった?」
「うん、行く前に何社か一次選考は受けてたから、帰ってから二次受けて今結果待ち」
「そうか、上手くいくといいね」
「うん、あ、そこの公園の前で停めて下さい」
彼がスーツケースを持ってくれる。
あまった片手で手を繋いできた。
「ここら辺は静かだろ?」
「うん、建物は高いけど、雰囲気は私の住んでる街に似てるね」
「気に入った?」
「うん」
「少し行ったところに、商店街があるんだ。電車乗り換えなしで大型ショッピングモールもある。少し行けば海もあって、住みやすいとこだよ」
「まるで、こっちに呼び寄せるみたいな誘い文句だね」
「そうだよ、だってこっちに早く来て欲しいもん」
「もう、子供みたいなんだから」
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