第4話
ホテルのベットに横なって向かい合って話す。
お互いにため込んだ寂しさを、さっきまで埋め合っていた。
久々に見た鮫島さんは相変わらずたれ目で、端正な顔立ちの美男子だ。
短くなった髪に手を伸ばした。
「髪切ったんだね」
「うん、邪魔だから帰ってからすぐ切った。もう行くか?俺んちに帰ろう?」
「本当にいいの?」
「一緒に居たいんだ、正月終わったら帰るんだろ?待ち合わせする時間がもったいない」
「お義母さんは?いいのかな、入り浸って」
「母さんは夜勤が多いから、愛し合う問題はたっぷりあるよ」
「そんなこと心配してないよ」
「そんなことって何だよ?俺には一番大事なことなのに」
それからふたりでシャワーを浴びて服を着る。荷物をまとめて支度もした。
「母さんあきのこと覚えてたよ。写真見て『この子、やっぱり綺麗になったねぇ』って言ってた。」
「うん、来たときも言われた。わたし、逆に覚えてなくて申し訳なかったよ」
「それはしょうがないよ、あきが8才くらいの時に村を出たんだから」
それからも時間を惜しむように、二人の世界に入り込み話をしていた。
ホテルを出てタクシーに乗り込み、会話に夢中になって大事なことを忘れたことに気がついた。
「あ、お金…」
「いい、要らない」
「何で?この前の旅行も払ってないよ私」
「いいんだ、俺の我儘だから。そのお金使ってまた来てくれればいいよ」
「うん…わかった。ありがとう」
そう言えば嬉しそうに手を繋いでくる。
そういう素直な感情がさ、さっきまでの彼とは正反対でドキドキしてしまう。
本当に同一人物だよね?
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