9-2.
梟とアニエロは、すぐにドアから廊下へ飛び込む。殿下は窓辺へ走る。
瞬間、音が先に来る。
風のような、鋭い「ヒュウッ」という音が耳をつんざき、まるで空間そのものが裂けるような。
その次に、爆発音が轟く。
耳をつんざく音。肉体を揺さぶる衝撃。
火花と煙が一瞬で『殿下』のいた部屋を包み込み、視界が真っ白になる。
爆風が二人を襲い、風圧が窓を打ち、瓦礫が飛び散る。
何かが燃え上がっている音がする。
目を開けた瞬間、目に入ったのは、燃えた後の灰が、ひらひらと散る様。
アニエロはゆっくり顔を上げる。
梟はすでに身を起こし、『殿下』のいた部屋の場所を凝視していた。
絨毯にはところどころ火が点き、床が消え去り、床の下の骨組みが剥き出しになっている場所もある。
『殿下』がいたはずの書斎デスクは、どこに行ってしまったのか。
アニエロは息を呑み、梟を見る。
「……死ん、だ?」
言葉にした途端、喉がつかえた。煙と焦げ臭い空気が、肺の奥まで入り込んだのだ。
「爆風で割れた窓から、飛び降りて逃げた可能性はある」
厳しい表情をした梟は膝に手を置き、立ち上がる。
「この爆発で?」
アニエロは手から離れ、廊下に転がった
「あのな……お前が大量のサブマシンガン相手に機関銃を撃ちまくって、それで無傷な方が、これよりよっぽど可能性が低い」
半ば呆れた梟はアニエロを指差して言う。
アニエロは、少しだけ眉を寄せ、考えた。
――確かに、こんな爆発の中で、自分たちは生き延びているのだから。
『殿下』が死んでいない可能性も、十分に有り得る。
「どこ行くの?」
何も言わずに歩き始めた梟へ、アニエロは尋ねる。その手には、機関銃を抱き締めている。
「確認のために、庭へ降りる」
梟はそう言って、階段に向かう。
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