8-3.
「俺と扱いが違うよね」
別れ際に一言添えられるみちると、自分とでは扱いが違うと半笑いで言う。
「当たり前だ。金で動くマフィアよりは信頼できる」
そう言って、梟は車を猛スピードで発進させる。
「ミチルに向ける優しさの半分くらいを、俺に向けてくれてもいいんだけど?」
「お前のこと、嫌いなんだよ」
梟が顔を顰めて答えるのを、ルームミラー越しに少しだけ見たアニエロは、吹き出して笑う。
「アニエロ」
ジープの前には『殿下』の屋敷がどんどん近づいてきた。梟がアニエロを呼ぶ。
「お前の出番だ」
初めてここを訪ねた時のように、今日も正門には数人の警備が、ピシッと並んでいた。
その周りにも、数名のスーツ姿の男たちがうろついている。スーツ姿の男たちは、サブマシンガン片手だ。
「オーケー!」
梟に言われたアニエロは、満面の笑みで機関銃を構えた。土砂降りの雨のような音が鳴り響く。
正門に突っ込んでくると見せかけて、正門側の警備をまず一掃する。
ジープは無理やり、門に突っ込んでいき突破していく。
酷使しすぎて、アクセルを踏むと、悲鳴に似た音が出るようになっていた。
敷地内に入るなり、梟とアニエロは車を降りる。
目の前には、白亜の大豪邸。
外の喧騒など露知らず、それは静謐な佇まいだった。灯りが点いているのに、人のいる賑やかさが感じられない。
――不気味なほどの静けさ。
屋敷の奥には、手入れの行き届いた芝生に、噴水の設置された庭園がある。
順当にいけば、この庭園には、既にみちるが侵入しているはずだ。
「じゃ、俺が先頭に出るから、あんたは後ろについてこい!」
アニエロは機関銃を一撫でしてから、自信たっぷりの笑顔を見せる。
「間違っても、俺に流れ弾が当たらないようにしろ。絶対だ」
梟は、興奮気味のアニエロを諫めるように言う。
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