7-3.
カップルから車を奪ったみちるは、エンジンをかけるなり、猛スピードで発進する。
殺伐とした路上に、着の身着のままで放り出されたカップルたちは、抱き合いながら、泣き叫んでいた。
みちるが乗った車が動いたのを見た追っ手たちも、すぐに動く。
車。バイク。次々に後を追ってくる。
みちるが運転する車は蛇行して、ぴったり後ろについた追っ手の車を、対向車にぶつかるように仕向ける。
わざと障害物の脇を通り抜け、車体の脇をすり抜けようとしたバイクが、そこに引っかかるように運転した。
リアガラスに着弾し、蜘蛛の巣状のひびがいくつも入る。
割れるのも時間の問題で、いずれダイレクトに弾丸が貫いてくるだろう。
みちるは轟音を上げて道をUターンする。
追っ手の車とぶつかり合い、互いに弾丸を撃ち込める。
みちるの右肩から、真っ赤な血が飛び散った。一瞬遅れて痛みが走る。
その代わり、運転手と撃ってきた男には、みちるが撃った弾丸は命中している。
窓の外では、道路脇に人々が立ち並んでいた。
老若男女、身なりもバラバラだ。
だが、みな同じものを手にしていた。
それは、銃だ。
みちるの車が姿を見せるや否や、銃口が一斉に向けられる。
次の瞬間、銃弾の雨が降った。右から、左から、容赦なく。
フロントガラスのひび割れがひどくなる。視界はないに等しい。
ボディを叩く鉛の音が、みちるを焦らせた。
舌打ちし、ハンドルを握る手に力を込めた。
ここで退くわけにはいかない。
みちるは、元いた地点、梟がいたビルの隙間まで車を強引に走らせる。
車を止めた瞬間、隙間から梟がどっさりと銃器を抱えたまま、走り込んできた。
梟をピックアップした車は、今度は猛スピードでバックする。
追いつこうとしていた追っ手の車と、そこで派手に衝突する。
梟は、上半分が欠けたリアガラスから銃口を突き出し、追っ手の車を狙った。
フロントガラス越しに、運転手と仲間たちの姿が見える。
そのまま、手にした
その瞬間。
横から車が飛び出してきた。
急発進した車が、みちるの車のボディに激しくぶつかる。
車体が大きく揺れ、横転しかかる。
みちるは歯を食いしばり、ハンドルを必死に抑え込む。
何とか持ちこたえ、突っ込んできた車を振り切るように走り続けた。
「屋敷に行け!」
梟は号令のように、『殿下』の屋敷を目指せ、とみちるへ叫ぶ。
「いぇい!」
咄嗟に出た返事は、気の抜けるものだったが、みちるは大真面目だった。
みちるが運転する車は、歓楽街を抜けて都心部を目指す。――目的地は、『殿下』の屋敷だ。
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