3. Bite the bullet

3-1.



 アニエロとみちるは、怯えた様子で店を後にするドミニクを、並んで笑顔で見送った。

 

 ドミニクは足早に歩きながら、何度も振り返る。その仕草には、彼の内心の動揺が滲んでいた。

 二人が追いかけてこないと確信するまで、ドミニクは気を抜けないようだった。

 

 梟は隣のビルの陰から、その光景を静かに見ていた。

 みちるとアニエロの明るい笑顔と、ドミニクの不安そうな背中が対照的だ。

 

 やがてドミニクが街角で姿を消すと、梟はゆっくりとみちるたちの前に姿を現す。

 

「一対一でドミニクと話をするとは、お前も相当な無茶をするな」

 みちるとアニエロは作り笑顔を浮かべたまま振り返り、梟の言葉を聞くと、途端にその笑顔を引っ込めた。

 

「まぁ、聞きたい話が聞けたのでオッケーってことで」

 みちるは少し肩をすくめて苦笑した。みちるが余裕を見せているのとは相反して、梟の顔は険しい。


「世話になったな」

 困った顔で、みちるとのやり取りを見ていたアニエロに、梟が言う。

 

「もう二度と世話したくない」

 その梟の言葉に対し、アニエロはニコッと笑って答えた。

 

「わかる。俺もそう思う」

 梟はアニエロの肩を軽く叩き、何か言いたげな顔をしたみちるの腕を掴む。

 そして、みちるを引きずるようにして、街の人混みへ紛れていく。

 

 アニエロは注意深く、二人の姿を目で追いかけていた。

 しかし、数秒もしないうちに見失ってしまう。

 雑踏の多さが原因か、それとも二人が追跡を警戒して巧みに姿を消したのか。

 どちらにせよ、アニエロには知る術がなかった。



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