第4話
野上と流星が心配そうに、俺を見る。
「どーした、伊達?」
俺はそんなに暗い顔をしていたか?
「……別に。何でもねーよ」
そう言うと野上は立ち上がった。
「じゃ、帰るか!看板も完成したしなっ!」
「俺、部活行くわ。二人とも、また明日な」
流星がハケを戻しながら俺達に手を振った。俺は鞄を持って教室を出る。
「野上、帰ろう」
「あぁ、そうだな」
俺はこう見えて、結構意気地無しなんだ。
「なぁ、野上。俺、やっぱり告白しない」
俺の言葉に野上は一瞬、黙ってから呟いた。
「良いんじゃねーの。お前がそれで良いなら。でも、なぁ、伊達」
野上が改札を通りながら言う。
「好きなんだろ、山本が」
「……」
叶わない恋を追うほど強くないんだな、俺は。
「諦められるのかよ?」
「……簡単だよ、そんなの」
簡単だ、そんなの。忘れるくらい、俺にもできる。
「伊達、」
「もう良いだろ。
お前は横溝とよろしくやってろ」
八つ当たりとか、ホントに格好悪いな。
家の前でウロウロしてると弟が帰ってきた。
弟の義旭は彼女を送るから遠回りして帰ってきている。
「あ、兄さん。お帰り」
「義旭、鍵あるか?」
「また、忘れたのかよ。いい加減にしろ」
はぁ、とため息をついて鍵を開ける。
「それで、山本先輩には告った?」
義旭は生徒会副会長だから山本と親しい。
「……だらしねーな、ホント」
黙る俺を見て義旭が呟く。
「……別に好きじゃねーし」
俺の言葉を聞いて目を細めた。
「何かあった?」
義旭に山本のことが好きと言ったことはないけど、兄弟だしそれくらい分かるだろうな。
「何もねーよ」
俺は部屋に入って一人、ベッドに寝転ぶ。
……山本はもしかして竹沢が好きなのか?
いやいや、そんなことねーだろ。
クラスだって同じになったことねーし、接点も少ねーし。
……けど、俺と付き合うとかありえないんだろ?
別に竹沢との関係を疑うとかそーゆーことじゃねーんだ。
俺はあの言葉が結構、ショックだったんだ。
それは確かに事実だし、だけどもう少し、ためらってほしかった。
「ともにいー、ご飯だよー」
中二の弟の
俺は三人兄弟だ。
「……今、行く」
部屋を出ようとしたらベッドの角に小指をぶつけた。
「いってぇ!」
……なんで俺ってこうなんだろーな。
「はぁ」
もう、バカバカしくて笑えもしない。
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