第3話
流星がふと、廊下を見てつぶやいた。
「…あ、山本、男といる。」
流星がふと廊下を見て呟いた。
「しかも竹沢といるぞ」
流星の声で振り返った野上がわざとらしく声を張る。
「あぁー、あの、イケメン決定戦で三位の竹沢!」
そして、その後チラッと俺を見た。
「……なんだよ?」
「何話してんだろーな?」
「……知らねーよ。良いから、塗れよ」
正直めちゃくちゃ気になる。
竹沢丈は野上の言った通り去年の文化祭のイケメン決定戦で三位を取るほどのイケメン。
バレー部の部長で、小さい頃外国にいたから英語が喋れて、しかもなぜか調理部にも所属していて、とにかく多彩。
俺や野上が勝てる要素はゼロ。
流星は決定戦で勝ってるけど。
「伊達ー、竹沢と山本、超長話だなぁ」
流星が作業しながら俺に言ってくる。
顔を見たらニヤニヤしてた。
「……ちょっと、筆洗ってくる。
筆を洗ってくるだけだからな」
気になって仕方なかったので俺は廊下に出て水道に向かった。
廊下に出てきた俺を山本が見て笑う。
「……なんだよ?」
「頬に赤いペンキついてるよ?」
「えっ……?!」
……流星と野上、何で言わねーんだよ!
「トイレで見てきたら?」
山本がそう言いながら俺にティッシュを渡してくる。
「使った方が落ちると思う」
そんな俺達の会話を聞いて竹沢は笑顔で言う。
「二人とも仲良いねー。
もしかして、付き合ってるの?」
その言葉に山本が笑顔で返した。
「ヤダなー、竹沢。そんな訳ないじゃん。
クラスがずっと同じだから確かに仲は良いかもだけど」
「……トイレ、行ってくる」
俺はその場にいるのがなんだか辛くなって、急いでトイレに向かった。
鏡を見るとアホみたいにペンキを付けた自分の顔が映る。
水で濡らしてティッシュを抜くと最後の一枚だった。
付き合ってる訳ない。そうだよな、やっぱり。
山本と俺が付き合ってるはず、ない。
「……あほくせー」
告白なんてするだけ無駄だ。
山本には竹沢みたいな英語が喋れて料理もできて、おまけにしっかりしていて、そんな男がお似合いだろ。
教室に戻るとき、もう山本も竹沢も廊下には残っていなかった。
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