出荷前夜、苺もやはり不安になる
第12話
秀の言ったとおり、二週間後に愛子先輩とゆきくんは別れてしまいました。
「……で、なんで落ち込むのよ、蘭ちゃん」
弥生ちゃんがお酒を飲みながら言う。
「振ったのは幸也からなんて蘭ちゃんにチャンス到来じゃない?」
「……うん、そうなんだけど、ね」
そのはずなんだけど、……なんだけど。
「私、怖くなっちゃった」
そう言った私の顔を心配そうに覗き込んだ。
「怖いって、何が怖いの?」
自分でもよく分からないけど、ゆきくんが愛子先輩を振ったって聞いた時、嫌だなって思った。
「だって私も、愛子先輩みたく振られちゃうかもしれない」
その言葉に弥生ちゃんは固まった。
「……どーゆーこと?」
「愛子先輩にそーしたってことは皆にするってことだもん」
それに、一番嫌だったのは。
「ゆきくんが人を傷付けるところ見たことなかった」
私の知らないゆきくんを知ってしまったこと。
「ゆきくんは私のなかでキラキラしてて、なんでもできて、皆に優しくて」
でも、それはあくまで私の理想像だったのかな。
「……幸也は誰にでも優しい。優しすぎるのよ」
弥生ちゃんが私の頭を撫でながら言う。
そして私の部屋にあるゆきくんと私の写真を見た。
「……蘭ちゃんは秀そっくりだね」
弥生ちゃんが深くため息をついた。
「秀とあいつは仲良いけど、秀はやっぱりかっこいいから」
写真を置いてニコッと笑う。
「蘭ちゃんもかわいい」
「…秀より、ゆきくんのが全然かっこいいのに」
私が下を向いてすねると弥生ちゃんが隣に座った。
「あいつはそう思えないのよね、多分。
だから言うのよ、『自分じゃ足りない』って」
そして弥生ちゃんは部屋を出ていく。
「だからさ、蘭ちゃん。怖いなんて、言わないで」
弥生ちゃんの後ろ姿はいつもより少し小さく感じた。
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