第4話 『私、好きなの。』

放課後、輝人は学校の帰り道を一人で歩いていた。空は少しずつオレンジ色に染まり始め、駅へ向かう通りには学校帰りの生徒たちのざわめきが響いている。


ふとスマホを取り出してLINEを開くと、華乃からのメッセージが届いていた。


「昨日、言えなかったことがあるんだけどさ、実は…」


その一文を読んだ瞬間、輝人の心臓が一気に跳ねるように鼓動を打った。昨夜の電話のことが頭をよぎる。「声が聞きたい」なんて可愛らしい言葉を取り消してしまった彼女が、何を伝えたかったのか――それが気にならないはずがなかった。


輝人は立ち止まり、少し深呼吸をしてからメッセージを打つ。

「実は、何?」


送信ボタンを押してから、画面をじっと見つめた。華乃がこの後に何を言おうとしているのか、予想はできない。それでも、どこか期待している自分がいるのを感じた。


少しの間、既読がつかなかったが、次のメッセージが現れる。その瞬間、輝人の胸がまた高鳴る。


そして、画面にポンと新しいメッセージが表示された。


「私、好きなの。」


その文字を目にした瞬間、輝人は足を止めた。周囲の人々の声や駅へ向かう足音が、一瞬遠くに感じる。


「好きなの」――それが何を指しているのか、はっきりしていた。輝人の頭の中で言葉が何度も反響する。


手が少し震えながらも、輝人は思い切って返信を打つ。

「好きって、もしかして……俺のこと?」


送信すると、心臓が耳元で脈打つような音を立てる。返事が来るまでの数秒が、永遠に続くように感じられた。


そして、華乃からのメッセージが返ってくる。

「うん、輝人のこと。」


その一言を読んで、輝人は自然と笑顔になった。人混みの中で一人スマホを見つめる自分に気づき、少し恥ずかしくなったが、それ以上に胸が熱くなる。


「華乃、ありがとう。実は俺も……ずっと華乃のことが好きだった。」


そう送ると、すぐに「本当に!?」という華乃からの返信が届く。


「本当だよ。高中の時からずっと。」


その言葉を送った後、輝人はふと空を見上げた。オレンジ色の空が二人の新しい関係を祝福しているように思えた。


そして、華乃から電話がかかってきた。輝人はすぐに応答し、電話越しの華乃の嬉しそうな声を聞きながら、これまでの距離が一気に縮まったことを感じていた。

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