第3話 電話の向こうの本音
「輝人、なんか……改めて言うと本当に変かもしれないけど、こうやって話してると落ち着くんだよね。」
電話越しに華乃の声が柔らかく響く。その言葉に輝人は胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
「俺も。華乃の声聞いてると、不思議と安心するっていうか、疲れとかどっかいっちゃうんだよね。」
正直な気持ちを伝えると、華乃が少し笑う声が聞こえた。
「ほんと?」
「ほんと。だから、さっきのLINEのことも全然変じゃないし、むしろ嬉しかったよ。」
その言葉を聞いた華乃が一瞬黙り込む。輝人は画面越しに彼女の顔を想像する。きっと今、照れているのだろう。
「……輝人って、たまにズルいよね。」
「え、ズルい?」
「だって、そんなこと言われたら、もっと話したくなっちゃうじゃん。」
その言葉に輝人は思わず笑ってしまう。
「それなら、俺もズルいって言われる覚悟で言うけど……俺も華乃ともっと話したい。」
しばらくの沈黙のあと、華乃が静かに息を吐く音が聞こえる。
「じゃあ……今日は眠くなるまで、話していい?」
「もちろん。」
輝人は即答した。
それから二人は、たわいもない話をしたり、お互いの学校での出来事を話したり、これからの予定について語り合ったりした。時間はあっという間に過ぎていった。
時計を見ると、既に深夜を回っていたが、輝人は全く疲れを感じなかった。華乃との会話は心地よくて、時間が止まってしまえばいいとさえ思った。
「もう遅いよね……そろそろ寝ようか。」
そう言ったのは華乃だったが、声にはまだ少し名残惜しさがあった。
「うん、そうだね。でも、また明日話そう?」
輝人がそう言うと、華乃が少し笑って答える。
「うん、約束だよ。」
「おやすみ、華乃。」
「おやすみ、輝人。」
通話を切ったあとも、輝人はしばらくそのままスマホを見つめていた。短い会話の中にも彼女の気持ちがたくさん詰まっていた気がする。それを思い返すだけで、自然と微笑んでしまう自分がいた。
明日がもっと楽しみになる――そう感じながら、輝人はようやく眠りについた。
一方で、華乃も輝人との会話を思い出しながら、スマホを握りしめていた。
「ほんとに素直に言っちゃったけど……嫌じゃなかったよね。」
そう呟くと、そっと笑みを浮かべながら目を閉じた。
互いに同じ気持ちを抱えながら、二人の夜は静かに更けていった――。
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