第11話 - 鳥は窓から飛び込む

吸血鬼に呪われた後、主任執事は三日間眠り続けていた。ついに目を覚ましたとき、何が起こったのか思い出せなかった。そのおかげで、私は責められないように自分の行方について嘘をつくことができた。 執事の手伝いなしで、ロード・ハーグリーブは仕事で忙しすぎて、私が事務所に侵入したことを思い出せない。

それで、邸宅での生活は普通に続いた。吸血鬼が村を取り憑くという噂は、邸宅に来る予定の悪魔ハンターの噂に取って代わった。私は彼が本当にウィリアム・ハーグリーブだという理論を誰にも言うつもりはない。とにかく、その日以来会ってないから、確認する期待はなかった。

私は買い物のために村へ行った際、吸血鬼の噂について詳しく調べた。初めに、2週間ほど前、霊媒師は白鳩を食い尽くす蝙蝠を見たのが主張した。凶兆と言われている。そして、村人たちは血が全て飲み干された牛が、首に噛み跡を残しているのを見つけた。行方不明になった人についても非難があったが、その人はパーティーで酔っ払い、自分で森に迷い込んだだけだった。そして二日後に戻ってきた。

それ以上の合図は必要ではなかった。皆は伝説や物語を思い出して、広め始めた。新しい規則が作られた。夜に一人で歩かないこと。使っていないときは、ドアや窓を常に閉めておくこと。太陽が出ていない場合、知らない人を家に招き入れないこと、など。

村人たちが家をニンニクで飾っていたせいで、買うことができなかった。鍛冶屋が鉄製の十字架を売っていたせいで、蹄鉄の注文が遅れていた。昔の伝説に登場するお守りが本当に効くかどうかは分からないけど。


霊媒師に会うよう頼んだ。黒魔法に詳しいと言われているから、答えを教えてもらえると思った。この婆さんは、みんなから「占い婆」や「婆」と呼ばれていて、変人として有名だった。誰も婆に話しかけない時期もあり、皆が助けを求める時期もある。180歳以上だと主張しているが、これまで証拠を示したことはない。

そのとんでもない主張にもかかわらず、この村の歴史に関して間違いなく詳しい人物であり、吸血鬼が初めて訪れたことを知っている人物であることに違いない。婆は村の近郊に住む。見た目は廃屋のようだが、窓から暖炉の光が漏れているから確かに誰かいるそうだ。その家は森の木々と一体化しているように見える。家の前には植物や宝石が飾られていて、家の後ろは木の枝のせいで見えない。

ドアにたどり着くために、垂れ下がっている物を避けるように頭をかがめた。しかし私がドアをノックしようとした時、家の奥から声が響いた。

「入りなさい!遅れましたよ。」

内部は本の山や、さまざまな形の箱や、奇妙な色の液体が入ったガラス瓶で散らかっていた。暖炉のそばにしゃがんでいる婆が見える。散らかりの中で経路を探しながら、婆の隣まで着く。

「突然お宅にお伺いして申し訳ありません。この村の歴史に関するご質問を聞いてよろしいでしょうか?」

「質問、質問、いくらでも聞いてくれ。でも、本当の質問はただ一つだけだぞ。」

「何の意味ですか」とお聞きしようとした瞬間、視界の端に灰色何かが窓から入ってくるのが見える。部屋の中をひと回り飛んだ後、止まり木に止まる。背中の羽毛は銀灰色で、胸の部分は黒と白の横縞模様で、鋭い爪と嘴を持つ。止まり木に座りながら、燃えるような赤褐色の目で私をじっと見つめている。

「その鳥は、ペットでしょうか?」婆は私に答えずに続けた。

「ひっくり返した茶碗の下に隠れていたネズミが、初めて世界に顔を見せている。それができるだけの勇気を見つけたね。この重要な時期に。」

突然鳥が鳴いたのでびっくりした。

「重要な時期って、それは?さらに、私を知っていますか?」

「その箱を出してくれ。鍋の温度がちょうどいい」腰の高さほどに積み上げられた本の塔の上ではグラス瓶を指す。内容は乾燥した蛇だ。絶対にこういった食材を邸宅に持ってくるわけではない。

婆は私の手からすぐにグラス瓶を取ると、その中の全てを鍋に入れた。煮ている鍋にプツプツと溶け込む。

「ソフィア・ヘイズ。家族がいない子供。生存は唯一の目標だった。自分の選択肢がなかった。でも今から、どう生きるか選ぶ機会がある。」

彼女の視線の前で私は裸になったように感じる。口をすることができない。

「その邸宅の状態が知らないくせして、あの家族の運命を変えてみている。そして、吸血鬼の名前を見つけた。でも、それだけでは十分ではない。興味が湧いた。身元も知りたい。」

「そんな。なぜ知りますか?」

鳥はまた鳴いた。

「我々の目は広く見える」と答えた。私は再び鳥に目を向けた。その鳥は特別な鳥なのだろうか?何かの使い魔なのか?この人がただの婆ではないと思い始めた。鍋からボウルを注いで、小さいテーブルに私を座らせる。

「でも、私のことが関係ありません。この村の歴史について質問がありますが、それだけ知りたいです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。それにお答えいただければ、すぐに立ち去ります。」

婆はテーブルで私の向かいに座って、首を振る。

「飲みなさい。準備のためだ。そうして答えが得られる。」私の前にボウルが置かれた。シチューは汚れた緑色で、鼻をつくような臭い匂いを放っている。

婆の頑固さに腹が立ってきた。私はその答えを得ると決心しているから、ボウルを一気に飲み干した。すぐに吐き返しないように我慢しながら、婆はボウルを取り戻し、水晶玉をテーブルの真ん中に置く。

「さ、玉の中に深く見て、ウィリアム・ハーグリーブの真実を見せてあげる。」

口からようやく臭い味を追い払った後、やっと言葉を発することができた。

「ウィリアム・ハーグリーブっては、あの...」

「そう、吸血鬼だ。」

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