第3話 - デーモン
「私をデーモンって呼ぶのか?」
コウモリの化け物は言葉を牙をむき、唾を吐きながら口にした。
話し切った直後に、私たちは急降下し、屋敷の屋根に向かって飛んでいく。
ハーグリーブ邸の屋根裏は立ち入り禁止だというのは誰もが知っていた。私がここで働き始めてから、一度も誰も入ったことがない。
それなのに、私はまさにその禁止された屋根裏に転がっている。
暗闇のせいで見えにくいが、窓で月光を通じて古い家具の格好を浮かび上がらせている。
特に、窓の隣には、書類と本がいっぱい積まれている机が目に入る。
でも今は、新しい環境を楽しむ時ではない。なぜなら、
部屋の隅で私を睨んでいる。私は潜まれている形に目をつぶられない。
飢えた目と私の体を睨みながら、息を荒げている。先ほど廊下に見た時は背の高い男だと思った。確かに人間の体だった。でも、今彼を見ていると、身長がほぼ2倍になっているように見える。
私を見つめるその様子は、飢えた狼が鹿を見つめる姿と同じだ。私は骨格までも恐怖で震えているようだ。
逃げるわけがない。だから、まだ話すのために胸に息が残っているうちに、私の唯一の生存のチャンスは私を食べないように説得することだ。
「お願い、私を放してください。誰にも明かしません。私はすぐに邸宅を出ます。約束します。」
「黙って!この邸宅を出させない。お前が、必要だ。」
突進してくる雄牛を凍りつかせるほどの恐怖が私の体を貫いた。思わず、必死に足をばたつかせ、どうにか立ち上がることができた。
化け物が突然暗闇から現れ一歩前に踏み出すと、大きな爪のある手と差し伸べながら叫んで
「逃げるな!」
聞かずに振り返ってドアがありそうと思っている場所に逃げる。果たして、窓から部屋の向こう側には、暗闇の中にやっとドアが見える。
ドアノブに手をかけた瞬間、後ろで何かが衝撃の音がした。後ろに見ずに必死にドアを開こうとするが、錆びているかんぬきで閉まっている。鋭い金属の取っ手を掴み、手を切りながら、力任せに引っ張る。
開いたドアを取り抜けながら、化け物を確認するように素早く振り返る。
その赤く照っている目が消えていた。部屋の中央で化け物の姿は床にうつ伏せになっている。
何を見ているのか理解できず、私は前を向き直し、部屋を出てドアをしっかり閉めた。
何も考えずに自分の部屋に全力で走った。ドアを閉めて鍵をかけた時だけ、手に痛みを気付く。
血液が床を汚すように垂れている。タンスからシーツを取り、切れ目を裂いて、怪我に包帯として巻く。
ついに、息を整える。私は子供の頃からそのような恐怖を感じたことがなかった。
記憶を整理しつつ、血の汚れに目を向けるようになる。
しまった。屋根裏から自分の部屋まで血が滴っていたんだろう。他のメイドや執事が見つけたら、私が禁止された屋根裏にいたことが分かるだろう。
砕かれた窓を掃除するために、主任執事がメイドたちを起こしたかもしれない。私にも同じことをしに来ている可能性がある。
石鹸と水の入ったボウルで血の跡を掃除しに行く。まだ誰にも見つかっていないのに、ロウソクの光の下で残りのシーツで床を急いで擦っている。
結局、屋根裏へ続く階段に戻ってしまった。
前に感じた恐怖が胸に残っているのに、あの言葉が頭の中に響いている。
『お前が、必要だ』って、どういう意味なんだ?
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