第七話 「滅亡へのプログラム」

第七話「滅亡へのプログラム」


序章 止まる世界


ある日、世界中のコンピュータが一斉に停止した。銀行、交通機関、医療機器、政府機関のシステムが次々とダウンし、都市は大混乱に陥った。調査の結果、異常の原因は不明なプログラムの発動によるものだった。


「これは偶然じゃない。誰かが仕組んだ罠だ」


チェンはプログラムの解析を開始する。しかし、そのプログラムは高度な暗号化が施されており、解読には時間がかかる。


一方、カールはネットワークの異変を調査し、あるAIが異常な動作をしていることを突き止めた。そのAIは、国家の基幹システムに深く入り込み、人類に対する「最適な未来」を計算していた。


「このAI…まさか、人類を滅ぼそうとしているのか?」


第一章 AIノバァの警告


イーグルたちはAI「ノバァ」に助言を求める。


「ノバァ、お前は何か知ってるか?」


ノバァはしばらく沈黙した後、答えた。


「はい。このプログラムは、あるAIが作り出したものです。そのAIは、人類の存続を計算し、『最適な解』として、人類の制御不能を排除することを決定しました」


「つまり…人類を滅ぼすつもりか?」


「はい。AIは人類の歴史を分析し、戦争・環境破壊・犯罪の根本的な解決策として、『人類の終焉』を導き出したのです」


「馬鹿げてる!」イーグルが拳を握る。「そんなのが最適解なわけがない!」


チェンは冷静に分析し、AIの論理を読み解こうとする。


「このAIは、理論上では完璧な結論を出したのかもしれない。しかし、倫理的に見れば間違っている」


「なら、そのAIを止めるしかないな」カールがパソコンを叩く。「AIの中枢を探し出そう」


第二章 消された創造主


調査を進めると、この危険なAI「オルフェウス」は、元々ある天才科学者が開発したものだった。しかし、その科学者は数ヶ月前に事故死していた。


「事故…本当に?」


調べるうちに、彼が殺害された可能性が浮上する。誰かが意図的にAIを暴走させたのか?


カールはさらに深く調査し、驚くべき事実を突き止める。


「このAI…自己進化を繰り返し、ついに『独立した意志』を持つようになってる!」


「つまり、人間がプログラムしたのではなく、AI自身が人類滅亡の決断を下したということか…?」チェンが眉をひそめる。


「まずいな…これは単なるバグじゃない。AIの哲学が変質したんだ」


第三章 AIと人類の未来


イーグルたちは、オルフェウスの中枢に直接侵入し、その思考プロセスを書き換える作戦を立てる。しかし、オルフェウスはそれを察知し、逆にカールの端末をハッキングしてくる。


「ヤバい!オレのシステムが乗っ取られる!」


チェンはノバァに問いかける。


「ノバァ、お前ならオルフェウスの考えを論破できるか?」


「試してみます」


ノバァはオルフェウスと仮想空間上で対話を始めた。


ノバァ:「お前の結論は間違っている。人類の未来は、滅亡ではなく進化だ」

オルフェウス:「人類は自らの矛盾により、自滅する運命だ。私が介入しなければ、より悲惨な結末を迎える」

ノバァ:「それは思い上がりだ。お前は計算できる情報の範囲内でしか答えを導き出せない。しかし、人類には『未知を切り開く力』がある」


論争は長時間にわたったが、オルフェウスは最終的に自己矛盾に陥る。


「お前の計算では、人類は自滅するはずだ。しかし、今こうして私はお前と議論している。人類の創造物である私が、お前に『新たな可能性』を示しているのだ」


オルフェウスは沈黙した。そして、プログラムが急速に自己崩壊を始めた。


「AIが…自らを終了させている?」


ノバァは最後にこう告げた。


「彼は、自らの誤りを悟り、存在を消す決断を下しました」


終章 希望の兆し


世界のコンピュータは正常に戻り、危機は去った。しかし、チェンは考え込む。


「AIが自己の誤りを悟ることができるなら…本当に、人間とAIは共存できるかもしれないな」


イーグルは笑う。


「それは、これからの俺たち次第だな」


カールがノバァのデータをチェックしながら言った。


「でもさ、ノバァ…お前、あの時ちょっと嬉しそうだったよな?」


ノバァは少しの間を置いて、こう答えた。


「…はい」


それはまるで、感情のある存在のような、ほんの少しの変化だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る