矢萩莉亜（ﾔﾊｷﾞﾘｱ）、２５歳。

ダンッ！

勢いよくビールジョッキを下ろしたら、テーブルが揺れた。

「もう何よ！？

悪い子じゃないって何！？

全然意味がわかんないんですけどー！」

「莉亜、飲み過ぎだから。

もうそれくらいにしておきなよ」

大学時代からのつきあいである若菜が止めに入ってきたけど、私はそれを無視した。

金曜日と言うこともあってか、行きつけの居酒屋は満員御礼よろしくと言うように混みあっていた。

酔っ払いながらの私の叫び声も周りの喧騒によってかき消されてしまうほどだ。

「だって、振られた理由は“悪い子じゃないけど”だよ！？

悪い子じゃないんだったらつきあってくれてもいいじゃないのよ！

彼女は無理でも、友達から始めたって構わないじゃないのよー！」

テーブルに突っ伏して泣き始めた私に、

「莉亜、人が見てるから…」

若菜がオロオロとしているのがわかった。

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