第2話 心照らす光


 配信を見終わった後、物凄く興奮していた。ドキドキが収まらない。ライブを見に行った後はこういう感覚なのだろうと初めて知った気がする。ネットを使っての疑似ライブ体験、いや今はこういうライブもあるのだろう。

 それからというもの兎月さんの配信は出来る限り見に行った。行くと時々画面の構成が変わっていたりと細かい所がまた飽きないように工夫されている。


 その配信を見るようになってからはアプリを使ってみんなとチャットしたり絵を書いて貰ったり面白い写真をアップしたりと結構交流するようになった。

 こうしている内に「みんな色々やってるんだなぁ」と思うようになり始めた。病によって変わってしまった人生は暗い茨の道でしかない、そう思っていた心が少しずつ変わり始めた。

 DJ配信、動画配信、絵を書く、ゲーム実況、世の中色々な人が色々な事をしている。凄いな、みんな実にクリエイティブなんだと知った。



 いつの頃からか、もしかしたらこんな身体でも何か出来るのではないかと考えるようになった。

 いつも暗い足元を見つめ全てを諦め、全ての事に怯えていた。そこに差し込んだ細い光。それに気が付いたという事は暗い足元を見つめて泣いていた心が前を向き始めたという事。細い細いわずかな光、それは前を見なければ気が付かない希望という名の光。

 こんな身体で何が出来るのか判らない。茨の道を、涙の川を、暗闇を突き抜け光を目指し前へ前へと進んでいる。おそらく死ぬまで手を伸ばし続けてもその希望の光には手が届かないだろう。それでも諦めない。諦めたくない。

 

 配信を見てみたいと思った一瞬が心を変える始まりだった。心が段々と変わっていく始まり、それが



            ――― 『3時間の奇跡』 ―――





あとがき


 今回の小説は眠り人さんから話を聞き、意思を尊重し、書いて欲しくないという所は書かず、多少変えて欲しいという所は変えて書かせて頂きました。

 また、兎月さんにも連絡を取り活動内容を書いてもいいという許可を頂きました。


 近年SNSやネットでの付き合いが多くなり、顔と顔を合わせて話すという人と人の繋がりが希薄になったという事を時々耳にします。

 眠り人さんはあまり外出する事が出来ません。ですがネットの中で顔も名前も知らない色々な人達と出会い、チャットで話をし、時にはボイスチャットで直に話をし、そこで皆それぞれ色々な事をしていると知り、そこから病があっても何か出来る可能性があるのではないかと希望を持ちました。これはネットの中でも希望を持てる、希望を見つけられるという証ではないでしょうか。


 これを読んで下さった方々にどうかお願いします。色々な活動をしている人達に誰かの心の助けになっていると伝えて下さい。誰かの心の道を照らす光になっていると伝えて下さい。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

3時間の奇跡 高峰 涼 @kokoronokatachi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ