第2話
どういう状況なんだろう。
私は目の前の少女を見ながら思案する。
私は死んだはずだ。
夢じゃない。
痛みを感じたから。
その後は無の空間で目が覚めて,また眠った。
そして私は今,新しい地を足で踏み締めている。
状況を読み取れない。
「すいません,突然呼び出しちゃったら困惑しちゃいますよねー。」
「呼び出す?」
「まぁ細かいところまで話すと長くなっちゃうのでまとめて言いますね。」
「う,うん。」
何やら少女が改まった様子でいうものだから,こちらまで緊張してしまう。
「あなたは死にました。」
あれ?
えっと…
「うん,知ってる。」
「へ?」
呆けた表情を浮かべる彼女。
そんなに驚かれると申し訳なくなってしまう。
「(これ私が悪いのかな…。)」
「ン゛ッ…。普通死んだだけならここまでのことはしないのですが…天界まで今は混沌に陥ってるんですよね。」
「てんかい…?どういうこと?」
「天界はあなた方の世界で言う天国みたいなものです。」
「なるほど…。」
あまりピンとこなくて困惑していると,何かが頭の中に入ってくる感覚がする。
「今,知識について共有させていただきました。これで少しは分かるようになるかと…。」
「おぉ,ありがとう。」
彼女の情報のおかげで天界について詳しいことを理解することができた。
『天界』・・・その名の通り天使,神,悪魔,この三種族が共存する世界。
へぇー。
「それでですね,何が起こったのかと言いますと…」
だいぶ長い話だったから要約すると…
悪い天使(堕天使)とこの世界のウルティシャ王国が協力して,魔王を倒すために勇者召喚を行ったのだとか。
その勇者召喚で召喚されたのが,私の住んでいた世界の私の高校の生徒と教師だったということだ。
バッドタイミングすぎるよ…。
私は勇者召喚と同タイミングで死んだらしく,転生という形でこの世界に連れてこられたらしい。
全く,理不尽なものです。
「魔王って悪いやつじゃないの?悪いやつがやられるなら良いと思うんだけど…。」
異世界漫画とかでみる魔王は残虐非道の権化!みたいなキャラだったと思うんだけど…。
「んー,良いと悪いの半分地点?くらいですかね。良くも悪くも魔族って仲間想いなんですよね。」
「なるほど。仲間想いすぎるが故にってところがあるんだね。」
「そういう感じです。でも今回の件は完全に人間側が悪いんですよ。だからですね,不躾だとは思うのですが,あなたに助けていただきたい。」
「うーん。」
やっぱりそうくるよね…。
だってそうじゃないと私に話しかけてきたりしないもんね。
「(どうしよう…。)」
「なんか報酬?みたいなのはあるの?」
別に物欲があるわけではないが,一応聞いてみる。
「そうですね,『願い事を一つ叶える』と言ったところが妥当でしょうか。」
「それってなんでも?」
「はい,常識の範疇であれば。」
なんでも。
その言葉を聞いて真っ先に頭の中に出てきたのは,『普通』という言葉。
「(そっか…。)」
そこで私は初めて理解した。
「(私は普通の人生を歩みたかったんだ。)」
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