第30話 やっとこさっとこ一歩前進(してるようでしてない)。

 

 

 誰かがこう言った。『チクショーメ!』と。アレはドイツ語の空耳なんだっけか。例によって権利モンセンシティブかつ内容が内容なんで、具体名は出せないッス。各自で検索検索ぅ~して下され。


 総試行回数、161いろい63ろみ40よう回。161万て。前回(異次元ポンポンインベントリ内の詳細情報取得申請)の16いろ16いろろう回からひとつケタ違うやないか~い。


 1日当たり12時間、3秒に1回視界内の何かに鑑定を試行し続ける事、4ヶ月弱(サクッと自動処理バックグラウンドで)。日本だったら季節過ぎてんぜという期間をここ推定直径200kmのバカデカ真円の湖に拠点を構えて、黒柴わんこな俺こと柴崎しばさきコウスケは取り組んでまいりました(自分の名前をうっかり忘れそうだから言っておく)。


 やっとですよ、鑑定。目の前の生えてる草に~、ポン(鑑定)。


『ヤーワラワ草:食用可。水辺などの水分を多く含む土地に生える植物。柔らかい草質の為、好んで食する種が多数存在する。一応食用可だが、害は無いというだけで決して美味ではない』


 ほうほう、コイツ一応喰えるんだってさ。……で、


 試しに「はぐはぐ」と生で喰ってみる。生えてるままのフレッシュな草味。不味くも美味くも無い。人が喰うなら飢え凌ぎの水分補給用かな? そこにある水を飲んだほうが早いけど。



 さてはて、ようやっと時は来たれり。湖の水面に映る俺を鑑定ポン。


『ニーグレヴァ湖の水:飲用可。以下の情報は制限により開示不可となっております』


 いや違う、そうじゃな~い。そして不穏な説明だなぁオイ。普通に鑑定弾いて説明をカットすりゃ良いものを、これまた敢えてそう表示させてるような。もう一回!


『ニーグレヴァ湖の泥:食用不可。以下の情報は制限により開示不可となっております』


 これ、ワザとやってない? 誰が好んで泥喰うんじゃ(ミミズとか以外で)。湖の主(仮)さん俺で遊んでません?? ワンモアタイム!


『ニーグレヴァ湖の微生物(名称未設定):食用可。動物性の微生物プランクトン。この世界では特定の名称がありません。名付けしますか?』


 うおおおいっ、そういうヤバいのをここでブッ込まないで! うっかり名付けちゃったらテイムとかすんの? しちゃったりすんの? じゃあ『ニーグ◯イモン』!


 ――ピピピピッ! ピポンッ!


『名称設定不可:大いなる存在により名称申請は却下されました。もっと穏便な名称にして下さい』


 やっぱダメ? ダメか~そうやわな~、ってオイ! 穏便て何すか? いや薄々分かってるけども。だったら『ニーグレピッコイ(ニーグレヴァ湖の小さき者)』でいいよ。ピコい(めっちゃちっこい)って意味ね。


 ――ピンポーン! ……ピポンッ!


『名称設定認可:大いなる存在により名称申請は認可されました。以降はこの名称がこの生物に適用されます』



 ……うん? あ、それだけですか。っていうか適当に名付けたのに通っちゃったよ。これで良いんか、異世界?

 

 

 

 

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