第8話 最初から負ける気も無いが、勝つかは知らん。

 

 

 初日に俺を襲ったのと同じかは分からんが、どこからともなくヤツらは現れた。ここまでスムーズだと最早何かの防衛機能かフィールド型ダンジョンの可能性を疑うぞ?


 相変わらず小刻みにダムダム飛び跳ねながら俺を包囲する、人の手のひら大の色付き半透明なゴムボールスライム(仮)共。数はざっと20体。


 こっちもただ集結されるのを待っていた訳では無い。一応、策あっての事だ。


 所謂修行パートとでもいうべき3日間で俺は自分の固有能力であろう紫色の雷の利用法を色々と検討しては実践し少しずつ形にしていった。


 最初に着手したのは索敵だ。基本は軍事用のレーダーをイメージした上で魔法的マジカルな要素も加味して仮想マップ上での敵探査及びリアルタイム表示の概念を合体させてある。


 当然ながら細かな原理や具体的な動作がどうなっているのかは一切気にしていない。考えるだけ無駄だし俺自体ロクな知識も無い。ただただ『こんな風に実装しやがれ!』と念じているだけである。


 最初の電撃も『あの魚を捕りたい』で出たし、魚焼き器も『良い感じに焼けました~♪』というどこかのゲーム画面を思い浮かべただけだ。


 考えてもごらんよ皆様方。そもそも黒柴わんこな今の俺の存在自体がこの世界のク◯性能なエーアイの誤認識の末に生まれた冗談バグみたいなシロモノだろう?


 だとすれば、そんな経緯で最適化フォーマットされた俺はきっと細かな所でAIの補正アシストんである。


 この世界の仕組みシステムを騙すような真似をするならば、まずは自分を騙くらかせば良い。……というスゲー単純シンプルなカラクリなのです。


 んで、その敵自動表示システムが正しく機能しているかを確認する意味でも敵さんが視認できる範囲まで待っていたのもある。ちなみに動作は正確そのものでした。


 次に攻撃面。基本線は単純に紫色の雷を落とす。特に意識せずとも即座に出せるのが利点。威力と作動範囲は込めたエネルギー量に比例する。


 この作動範囲を極限まで狭めて一点に収束し、エネルギー量を高めればレーザーになる。この表現はそういうイメージという意味であって正確な作動原理は以下略。


 現時点でもレーザーは出せるようになったが、今回の相手が半透明のゲル状なんで効くのか確証が無い。加えて高火力ながらエネルギーバカ食いだもんで数発ぐらいしか使えない。これは後々洗練させて改善していく予定だ。


 電気というか電子というか電磁力と言えばで思い付くのはレールガン。原理的には可能だろうがこれには金属の発射体が必要で、黒柴わんこである俺にはちと厳しい。こちとら物を持っておけんのだよ。


「ぴ…ぎぎぎぃ!? ぴぎいいいぃ~~~っっっ!!!」


 ……そろそろお時間みたいである。追加トドメバリッとな。



 っっっどんっっ!! ……スパパパパパパァンッッ!!!

 

 

 

 

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