第2章 とりあえず誰かに会いに行く。

2-1 改めて旅立ち(とその前に)。

第7話 見事なまでにこれっぽっちも何もありゃしない。

 

 

 謎世界に黒柴わんことして放り出されゴムボールスライム(仮)共に追い詰められて崖下の海へダイブ、命拾いして岩場の魚を捕ろうとしたら内なる俺から紫の電撃が発生(ここまで3日)、これを崖上のヤツらへの対抗手段とするべく検証(に3日)、そして実践と反復を繰り返す事3日。


 俺としてはそれなりに戦える状態には持っていけたと思う。ちなみに3日で区切ったように見えるが最初の3日は偶然の産物だし、その後は3日以上やってもダラダラするだけでダレるのが嫌だったから打ち切ったというのが正しい。単に飽きっぽいとも言う。


 問答無用で攻撃してくるヤツらより、意思疎通は図れなくとも最低限スルーはしてくれる文化的な存在を要求する! それが人っぽければ尚良し。


 元人間としては近くで感じていたいんですよ人のぬくもりってヤツを。俺みたいな存在(推定モンスター)が排除対象とされるんなら流石に諦めるが。



 謎世界生活サバイバル10日目の朝。戦闘力向上の試行錯誤をしつつ崖上への道順ルート検討を同時進行でやっておいたので、そこへ向かって拠点としていた窪みから出発する。


 少なからぬ期間を過ごした寝床ともこれでオサラバ。まあただの凹んだ岩なので特に感慨は無い。アディオス・アミーゴス(さらば友よ)。


 人が歩いてどのぐらいかは最早分からんが俺のわんこボディで40分ぐらい崖下を進むと、ほぼ垂直だった崖の傾斜が緩やかになった場所が見えてくる。


 それでも人には険しい角度だし、何より重なる岩の層が風雨等による劣化で脆くなり崩壊しやすくなっている。当然身軽で四足歩行の俺にはこの程度そんなに苦ではない。


 ヒョヒョイとその傾斜を登り、おおよそ15分程かけて遂に崖を登り切った。駆け抜ければ5分足らずだろうが、時折立ち止まって周囲の景色を確認していたからな。


 崖の上は多少の草花はあるものの、へばりつくように生えており背丈はそれ程高くはない。そんな風景が暫く続くような岩がちの場所だ。カリフォルニアの険しい海岸沿いっぽいと言おうか。


 一見して特に何も無い。崖は高く切り立ち、降り場に適した箇所も見当たらず。人為的な形跡は皆無。ゴムボールスライム(仮)みたいなのがそこら辺にうろついてるぐらいだ、誰も住んじゃいないんだろう。



 ……ここには居ないってだけだよな? 人類的なのがとっくに滅亡してる退廃世界ディストピアとかだったら余裕で泣くぞ俺は。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る