第3話 妖刀
王様を待つ間、オレとスススズは金貨を袋に詰めていた。
流石に国家財産規模の金貨を持ち歩けば、同朋からも命を狙われるのは自明の理だ。
やがて、ジョフリー王が重たげな箱を抱えた兵士たちを連れて戻ってきた。
「こ、こちらが王家に代々伝わる名刀でございます……」
箱のふたを開けると、そこには、漆黒の鞘を持つ一振りの刀。
宝刀というには少し禍々しい──というのも、嗅覚の鋭いオレには、あの刀から微かに血の匂いを感じ取ったからだ。
オレは刀を手に取ると、柄に手を添え、鍔を親指で押し上げてみた。
「……悪くないな」
刃が顔を覗かせた一瞬、強い輝きを放つ。
刀は絹のように軽いが、刃は分厚く、軽く一振りすれば、風切り音が高く響いた。
まるで、ずっと失われていた身体の一部を見つけ出したかのように、刀はよく馴染んでいた。
スススズが興味深げに刀を覗き込む。
「いいじゃん、カッコいいね。名前とかあるのかな?」
王様は恐る恐る口を開いた。
「この刀は……先々代の頃から宝物庫に眠っていたため、今ではその名を覚えている者もおりません……」
「そうなんだ。それじゃあ、虎徹くんが付けたらどう?」
名前か──。
オレは、一目見た時からこの刀に並々ならぬ親近感を覚えていたためか、迷うことなく刀の名前を決めた。
「虎徹──こいつの名前は虎徹にする」
それを聞くと、スススズは身体をぷかぷかと泡立て、クスクスと笑った。
「自分の名前を刀に付けるなんて、今時小学生でもやらないよ?」
「うるせぇよ」
「だってさ、『ボクの名前は虎徹! 相棒の名前も虎徹! 二人合わせてダブル虎徹!』とかやるつもり?」
「言わねえよ」
オレがイライラしながら返事を返すと、スススズは笑いながら肩をすくめた。
「まあまあ、でもいいんじゃない?なんか、しっくりきてる感じするし」
スススズに真面目に向き合っていると、心がいくつあっても足りないので、オレは無視することにした。
改めて刀を鞘へ納め、腰に差す。
「さて、金も刀も手に入れたことだし、さっさとここを出ようか」
「じゃあ、次はどこへ行こうか?」
スススズが楽しそうに問いかける。
「……とりあえず、この国の外だな」
新しい相棒――虎徹を腰に携え、オレたちは次の目的地へ向かうことにした。
虎徹・ジェングと黄色い悪魔 こいえす @koiesu
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