第12話
黒い手帳型のカバーに包まれた、賢人のスマートフォン。
見るな、ということは、見て、だろう。
ビールを飲みながら、周りを見渡す。
お客さん達は皆、微笑んでいる。
右にいる若いナイチャーカップル、奥にいる年配女性4人のグループ、全員が。
賢人はトイレに入ったようだ。
どうせ麗奈の画像を待ち受けにしているのを私に見せたいのだろう、と思いながらスマホを取り、起動ボタンを押した。
息が止まった。
うちのベッド。
寝ている私の顔が大きく映っている。
隣に寝ている麗奈の方を向いている。
私、微笑んでいる。
幸せそうだ。
すごく。
思い出さないと。
あの画像を。ソファーの上の裸のあの子。
私が麗奈と二人きり過ごしている間、賢人は何度もあの子とセックスをしていた。
麗奈といる時間は楽しい。
でも、横に賢人がいてくれたらもっと楽しい。
違う、賢人が一緒にいたら、賢人にイライラすることができた。
まだ話ができず、泣きわめく麗奈にイライラするのではなく。
賢人が一緒にいたら、麗奈の日々の成長を一緒に喜ぶことができた。
私と麗奈は二人で公園へ行き、二人でご飯を食べ、二人でシャワーを浴び、二人で絵本を読んで寝ていた。
その間、賢人は何をしていた?
「だーれだ?」
賢人の息が耳にかかり、賢人の手が私の両目を覆った瞬間、体が震え、鳥肌が立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます